試合終了間際に阿南市出身の表原玄太選手が劇的ゴールを決めた9月15日のホーム岐阜戦。杉本竜士選手が相手選手をかわしてドリブルで駆け上がり、ゴール前へボールを送る様子を目の前で見て、胸が熱くなりました。そう目の前で。今回は、選手の一番近くで迫力いっぱいのプレーが楽しめるピッチサイドシートでの観戦をリポートします。

 

 

 ピッチサイドシートは、ゴール裏とメインスタンドの間のコーナー付近のトラックに設営されています。キックオフ45分前、総合案内の横にあるピッチサイドシート受付に向かうと、警備員がシートまで案内してくれます。

 

 席から右にはベンチ、左前方にゴール裏が見えます。試合前練習をする選手たちが目の前で躍動しています。表情や声、ボールを蹴る音がはっきり分かる近さです。時々ボールが飛んでくるので気が抜けません。

トラック上の「セブンイレブン」とあるところがピッチサイドシート

 試合中は、目の前を選手たちが駆け抜けます。ボールを受けて駆け出す速さやドリブルで相手をかわす気迫、緊迫した声、瞬時にどこを見てパスをだしているのかまで、選手と同じ視点でつぶさに見ることができます。スタンドからの観戦ではなかなか実感できない部分です。

 ふと振り返ると、すぐ後ろでは、控え選手たちがずっと体を動かし続けていて、ロドリゲス監督が「タロウ!」と杉本太郎選手を交代のために呼ぶ声も聞こえました。狩野健太選手のコーナーキックは、息遣いも聞こえそうなほどの至近距離です。

狩野健太選手のコーナーキック。奥に見えるのがピッチサイドシートで、すぐ目の前で蹴っているように迫力がある

 

 選手と同じ視点なので、サポーターの応援がどんなふうに選手に届いているのかを知ることもできます。ゲートフラッグやタオルを掲げて歌う第九や選手チャント、声援や拍手。試合後には、跳びはねながら歌う「コーヒールンバ」やタオル回しの一体感。選手たちが「力になる」というのもうなずけます。

 ピッチサイドシートの最大の特典は、試合後に選手たちとハイタッチができること。90分走り抜いた選手たちは汗を滴らせながら、笑顔で手を合わせてくれました。

サポーターの熱のこもった応援を体感することもできる

 

 初めてピッチサイドで観戦した女性は「想像していた以上に近い!特にコーナーキックはすぐ目の前に選手がいてびっくりした。選手の声も聞こえるし、サポーターの応援の雰囲気も分かるので、初観戦の人には迫力があってお勧め」と話していました。

 こんなに間近で迫力のプレーが楽しめるのに、この日のピッチサイドシート観戦者は記者(サポーター見習い)を含めて3人。ピッチサイドの魅力があまり知られていないならもったいない!クラブに聞いてみました。

 ■ピッチサイドシートはどんな席?

 徳島ヴォルティスのホームゲームにピッチサイドシートが常設されたのは、J1に昇格した2014年、当時はバックスタンド前だったそうです。それまでにも不定期で企画チケットとして登場していて、メインスタンド前やバックスタンド前など、場所もいろいろだったとか。現在の形になったのは2016年からで、ホームゲームのときに72席用意しています。チケットは前売りのみで、大人3500円、小中高生1500円です。

ある日のピッチサイドシート

 徳島ヴォルティスのチケット担当スタッフによると、「たまにグループでの利用やサッカーチームなどを招待することがありますが、ピッチサイドシートの利用者は1試合数人程度のことが多いです。PR不足を感じています」とのこと。

 ピッチサイド観戦者が増えない理由として、ファンクラブ会員の割引が少ないことと、他の席と比べて制約があることを挙げます。

 ピッチサイドシートは前売り券のみの販売で、試合当日の集合時間はキックオフ45分前。試合中は、ハーフタイムを除いて席を立ち上がることができません。ペットボトルの飲み物は持ち込みOKですが、シートでは食事ができないので、スタジアムグルメを満喫するなら集合時間までに。傘を差すことができない席なので、雨の場合はポンチョやレインコートが必要。写真・動画の撮影やフラッグを掲げるのも禁止です。

 スタンドと比べると座席の位置が低いので、遠くのほうが見えにくい場合があります。会員割引等がないので、普段はシーズンパスで入場しているサポーターがピッチサイドで観戦しようとすると、チケット料金を支払わなければならないのがネックです。

スタンドと比べると低いので、遠くのほうが少し見えにくい場合があります

 チケット担当スタッフは「試合によっては、会員のポイント特典でピッチサイドシート観戦クーポンに引き換えられることもあります。もっと会員が友だちを誘いやすいように割引ペアチケットや特典を付けた企画チケットなども検討していきたい」と話しています。

 ■他のクラブの状況

 他のクラブも、1試合限定の企画チケットを含め、ピッチサイドに特設シートを設けています。

 FC岐阜では、2017シーズンからピッチサイドに「エキサイティングシート」(100席)を開設。子ども料金は設けておらず、前売り3500円、当日4000円です。他の席種のチケットからのアップグレードも可能。特典としてチケット購入者全員にポストカードを、試合に勝つと抽選で1人に当日使用したボールに選手のサインを入れてプレゼントしているそうで、毎試合10席前後の利用があるようです。

 松本山雅も、2016シーズンに2試合で100席ほど設けたところ好評だったそうで、2017シーズンからバックスタンド側に「エキサイティングピッチシート」(540席。前売り大人4500円、小中高生2000円で当日は各500円増)を常設。12~40人での団体での観戦を受け入れており、その場合はチケットが割引になります。シーズンパスの対象にもなっていて、試合によって変動するものの50~70%の利用があるそう。

 中でも、非売品グッズと勝利後のハイタッチが特典のスペシャルチケット(限定20席、大人6000円、小中高生3500円)は、毎試合ほぼ完売となる人気。スタッフは「シーズンパス対象外のチケットですが、高額ながら完売するのは、選手の近くで見られる迫力と特典が魅力なのではないでしょうか」と話していました。

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 ピッチサイドで観戦してみると、スピードや音など迫力を体感することで、今まで気づかなかったサッカーの魅力に引き込まれます。サッカーやヴォルティスへの理解が深まるスタジアムツアーと組み合わせた企画チケットや、会員割引や他の席からのアップグレードなどがあれば、もっと利用が広がるのではないでしょうか。

 ★チケットの購入方法★

 ピッチサイドシートは、前売り券のみの販売で、試合前日までセブンイレブンのマルチコピー機で購入できます。マルチコピー機のチケットぴあのページに進み、Pコード(592-710)を入力。大人3500円、小中高生1500円で、手数料が必要です。見たい試合と枚数を選ぶとバーコード付きの払込票がプリントされるので、それをレジに持っていき、代金を支払うとチケットが発券されます。

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