古民家などの研究を通して美波町と交流のある神奈川大工学部建築学科の曽我部昌史教授(建築学)と学生らが、同町の木材加工会社から無償で譲り受けた県産スギの端材を活用し、熊本地震の被災地に贈る椅子を作った。熊本県が建設を進める仮設住宅の集会所で利用してもらう。18日に現地に出向き、第1弾として20脚を寄贈する。
曽我部教授は、熊本県が建築や都市計画を通して文化の向上を図る「くまもとアートポリス」事業のアドバイザーを務めている。集会所の椅子の確保に困っている現状を知り、ボランティアで製作することを決めた。材料について美波町役場に相談したところ、木材加工会社の野田産業(同町奥河内)が趣旨に賛同し、端材を無償提供してくれた。
1枚が長さ50センチ、幅13センチ、厚さ3センチで、計350枚を譲り受けた。曽我部教授と学生らは、4~7日に同町恵比須浜の町文化交流施設に滞在し、電動カッターなどで加工して高さ70センチの椅子20脚を作った。端材は計約50脚分の製作が可能で、今後も椅子の製作と寄贈を続ける予定。さらに、現地への運搬手段として、防水工事会社のナカバリコート(同町奥河内)が、使用していなかった軽自動車を無償で提供した。
熊本県は、県内で約2500戸の仮設住宅の建設を進めており、木造平屋40~60平方メートルの集会所を40棟設ける方針だ。
椅子を贈るのは、今月下旬に西原村に開設される1棟。曽我部教授と、美波町にサテライトオフィスを構える建築設計事務所「マチデザイン」(横浜市)の丸山美紀代表が、分解した部材を軽自動車に積み込んで17日にフェリーで九州へ向かう。18日に学生ら4人と合流した後、現地に到着し組み立てる。
曽我部教授は「熊本と徳島は林業が盛んなことが共通している。寄贈する椅子が徳島の木の温かさを伝えて、両県がより良い関係を築くきっかけにしてほしい」と述べた。
端材を提供した野田産業の野田穣嗣専務(39)は「間接的だが、被災地のために役立つことができてうれしい」と話している。