職場にとって新人は宝だ。教える先輩は、わが身を振り返るチャンスになる。慣れない相手に、何が重要で、どう伝えればいいのか、一生懸命考える。実は、自分の方が鍛えられている

 新人は、言われたことを言われた通りにやる。その姿に、先輩は「愚直」の大切を思い起こす。長年、新人記者が育つのを見てきた。繰り返される営みが、職場のモラルを保つ

 「右良し、左良し、前良し」。指をさして、線路を横切る。最近、JR四国に今春入った新人たちの訓練を見た。作業でレールをまたぐ度、「右良し」が始まる。教える先輩も、助役も、駅長も変わらない。不変の鉄則だ

 自分を振り返る。老化のせいか、注意力の低下を痛感することが増えていた。スマホを置き忘れ、ガスを閉め忘れ、家のドアに、鍵をかけ忘れる。「ガス良し、スマホ良し、鍵も良し」。指さし確認が毎朝の日課になった

 安全を運ぶ自動車の検査で不正が次々と発覚している。「コスト削減と納期厳守の圧力が・・・」。追い詰められ、改ざんに手を染める検査部門。もっともらしいが、20年も続くとなると首をかしげる。研修はないのだろうか

 新人や若手が入ってきたら、こう指導するんだろうか。「右も左も、目をつぶって」。人が入れ替わっても、何年も何年も繰り返したのだろうか。全く、分からない。