安倍晋三首相とトランプ米大統領との首脳会談で、日本の最大の懸案だった自動車や自動車部品への追加関税が回避されることになった。

 発動されれば、日本経済に深刻な影響を及ぼすことが懸念されていただけに、政府内や経済界の関係者は胸をなで下ろしているだろう。

 ひとまず、日本の主張が通った形だが、回避はあくまで「当面」である。加えて、これまで日本が避けてきた2国間の関税協議を進めることになった。

 会談後の共同声明で両首脳は、日米の互恵的な貿易・経済関係の重要性を確認したとしているが、額面通りには受け取れない。

 トランプ氏が最も重視しているのは11月の中間選挙だ。選挙情勢によっては、対日貿易赤字を削減するために、改めて自動車関税を迫ってくる可能性もある。

 安倍政権は、新たな交渉が政治的打撃になるリスクもはらんでいることを、肝に銘じておかなければならない。

 2国間交渉は、「日米物品貿易協定(TAG)」の締結に向け、農産品などの関税協議に入るというもので、交渉中は自動車への追加関税を発動しないとした。

 7月の欧州連合(EU)との貿易協議でも見られた、自動車関税を「脅し」に譲歩を迫るトランプ氏の手法だ。

 協議で課題となるのが、関税の引き下げ水準である。

 農産品では環太平洋連携協定(TPP)の水準までしか引き下げないとの日本の立場について、米側が尊重することを確認したとしている。

 ただ、米の農業団体は、対日輸出がオーストラリアなどTPP加盟国より不利になるとして不満が強いようだ。

 米側が、段階を踏むTPPよりハイペースの関税引き下げを迫ってくることも考えられ、日本の思惑通りに交渉が進むかどうか。

 日本はTPPやEUとの経済連携協定(EPA)を早期に発効させ、協定の恩恵をアピールしながらトランプ氏の圧力を封じるしかあるまい。

 首脳会談のもう一つの重要議題である北朝鮮問題では、トランプ氏と金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長との再会談に向け、日米、日米韓3カ国で連携することを再確認した。拉致問題解決へ協力することでも一致したという。

 気掛かりなのは、非核化の進め方などを巡り、日米韓にほころびが見え始めていることだ。

 韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領は、金氏の立場に理解を示し朝鮮戦争の終戦宣言に前のめりだ。トランプ氏も非核化実現に向けた具体的な措置や期限について、必ずしも明確な方針があるようにも思えない。

 とはいえ、日本は非核化や拉致問題で米国頼みにならざるを得ないのが現状である。

 再度の米朝首脳会談が準備されようとしている。どのような合意になるのか、安倍政権は米側と綿密にすり合わせておくことが重要だ。