アヘンの原料になるとして栽培が禁止され、徳島県内では自生数が減っているとみられていたケシの発見が再び増えている。県は今年、8月末時点で前年を大きく上回る1万本以上を処分した。花がきれいなため、知らずに苗を売っていたケースもあり、県は来年の開花時期にパトロールを強化する。
県薬務課によると栽培が禁止されているのはケシとアツミゲシ。4~6月に赤や紫などの花を咲かせる。許可されているヒナゲシと異なり茎に毛が生えておらず、葉が茎を包み込むように巻いているのが特徴。20年ほど前から違法と気付かないまま園芸用として広まり、河川敷や山間地などで自生するようになったとみられる。
県は住民からの通報などで発見次第、職員が抜き取って焼却している。ピークの2010年は168カ所で6万5616本を処分。チラシを配るなどして周知した結果、減少傾向となり、17年は44カ所で3807本まで減っていた。ところが今年は、65カ所でケシとアツミゲシ計1万1926本を処分し、前年から急増した。
県立博物館の小川誠上席学芸員によると、ケシの種子は発芽率が高い上、抜き取った後に焼却しないで捨てると、その場所で根付いて成長する。「一度自生した場所は何年かしてまた出てくることがあり、継続した監視が必要」と指摘する。
庭に植えていた住民の中には、県の聞き取りに「産直市で購入した」と答えた人もいた。16年には愛媛県大洲市の産直市でケシの苗が販売されていた。県薬務課は「販売はもちろん、所持すること自体が禁止されている。見つけたら自分で処分せず、必ず通報してほしい」としている。