多くの縁日が立ちにぎわう切幡寺の「中日さん」=阿波市市場町

 阿波市市場町にある四国霊場第10番札所・切幡寺では春分の日と秋分の日、経木(きょうぎ)に祖先の名前や戒名を書いて、ひしゃくで水を掛ける「経木流し」が行われている。祖先を供養する伝統行事で明治時代に始まったとされる。

 

 「経木流し」の日は、地元住民から「切幡さんの中日さん」と親しまれ、長い坂道の参道に沿って縁日が立つ。子どもたちにとっても楽しみであり、近くの県道では近隣の学校名が記された自転車がずらりと並ぶ。隣町出身の私も、友だちと「中日さんに行こう」と誘い合い、よく出掛けた。

 久しぶりに訪れた「中日さん」。20店ほどが連なり、昔ながらのたこ焼き、たい焼き、イカの天ぷらのほか、チュロスやクレープが売られていた。財布の中を確認しながらくじを引く子どもたち、たこ焼きをおいしそうに頬張る家族連れ・・・。過疎化や少子化でにぎわいは薄れたものの、変わらない光景が広がっている。

 本堂に向かう長い階段を歩むと、線香の煙とにおいが漂い、祖父母の手に引かれる子どもの姿を見掛けた。思わず50年前の自分と重なり、亡き祖父母に思いをはせた。