徳島サポーターの心を一撃でつかんだ。J1湘南から移籍加入し4試合目のホーム岐阜戦。1-1で迎えた後半ロスタイム、阿南市出身のMF表原玄太(22)が杉本竜の鋭いクロスに右足でジャストミートした。「ホーム戦を引き分けでは終われない」という同点弾に、雨中のスタジアムが歓喜に沸いた。
阿波踊りのゴールパフォーマンスで徳島育ちをアピールした。阿南市の富岡サッカー少年団でサッカーを始め、ヴォルティスジュニアユースにも在籍。「ホーム戦はよく家族と応援に通ったし、ジュニアユースの時はボールボーイとしてピッチのそばで選手の姿を見ていた」。プロを志したのもそのころからだ。
その後、ヴィッセル神戸U-18(18歳以下)の200人近い選考を突破してユース入り。2013年のJユースカップは決勝で1得点を決め、優勝に貢献した。
14年に念願のプロ生活を愛媛FCでスタートさせた。抜群のドリブルを武器に早々とスタメン入りし、出場3試合目でJ初得点を決めた。
昨年は徳島とJ1昇格を争った湘南でプレー。徳島との試合でも活躍し、「湘南が首位、徳島が3位と順位が近かったし、気合が入っていた」。鋭い攻め上がりと豊富な運動量は徳島のロドリゲス監督にも強い印象を与えていた。
その分、期待も厚い。小西の決勝点をお膳立てし初アシストを記録したアウェー大分戦後、指揮官は表原の評価を問われ「ポテンシャルはこんなもんじゃない。慣れればもっとできる」と強調。表原自身も「早く(得点という)目に見える結果が欲しい」と意欲を見せていた。
もうコンビネーションは心配なさそうだ。チームには杉本太や内田裕など同い年の選手も多く「すっかりなじめた」と笑う。休日は実家で過ごしたり、チームメートと食事に出掛けたりするなど、久しぶりの徳島暮らしを満喫している。
湘南は昨年、リーグ最少失点で連敗もなくJ2の頂点に。昇格するチームの条件を尋ねると明確に答えた。「負けないこと。負けそうな試合を引き分け、分けそうな試合を勝つ。そういう試合を一つでも多くできるかどうかが大事」
その言葉通り、岐阜戦で自ら勝ち点3をもぎ取った若武者が、徳島のラストスパートを加速させる。