北海道厚真町は、海に向かって平野が開く。その手前、役場のある町の中心部は、なだらかな丘陵に緩やかに囲まれている。緑の牧場で馬が草をはみ、田には黄金色の稲穂が実る。地震はこんな優しい風景を襲った

 町の至る所で民家の裏山が崩れている。山といっても、それほどの高さはない。火山灰が厚く積もった崩れやすい地盤とはいうが、こんな山が、というのが第一感。そんな山の大量の土砂が、民家をなぎ倒し、田畑を埋めた。死者は36人に上る

 道路はうねり、橋は通行止めになっている。雪に備えて頑丈なのか、倒壊家屋はさほど目立たない。同じ震度7の熊本地震のように、断層沿いに軒並みといったふうではない。屋根がトタンで、瓦より軽いのも一因かもしれない

 大規模土砂崩れは、防災ハザードマップに記載された危険区域外の比較的緩やかな斜面でも多く起きている。「雨の被害の延長に土砂災害があると思っていた」と宮坂尚市朗町長。地震による土砂崩れは想定外だったと明かした

 土砂災害の警戒区域は、全国的に豪雨を前提にしている。南海トラフ巨大地震の迫る本県でも、改めて抜かりはないか点検したい

 「まさか台風の翌日に大地震だなんて」と地元の人。大崩落の原因は、地盤が水を含んでいたことにもあるとされる。災害は「まさか」の集合体だ。