県内有数の早場米産地の阿南市で、コメの栽培と太陽光発電を同時に行う「ソーラーシェアリング」の実証実験が、10月末から始まる。西野建設(同市向原町)と阿南高専が、収穫量を確保しながら売電収入を得る仕組みを共同開発した。広い農地でエネルギーを生産するとともに、農家の所得を安定させて後継者の確保を目指す。
実験は、阿南市七見町の農家2戸と計0・6ヘクタールの賃貸契約(20年)を結んで行う。それぞれの農地にアルミ合金製の骨組み(高さ3・3メートル、幅40メートル、奥行き35メートル)を設置し、太陽光パネル320枚を固定。農地の3割を発電、7割を稲作に使い、平均収穫量の8割を確保する。
年間発電量は1戸当たり約10万キロワット時を見込み、約200万円の収入を得る計画だ。毎月の発電量や四国電力への売電収入を記録するほか、コメの生育状況や品質への影響も調べる。
西野建設は、米価低迷や後継者不足に悩む農家の所得向上策を模索。兵庫、岐阜両県などで行われている稲作と併用した営農型発電に注目した。
2016年に自然エネルギー研究を進める阿南高専などと開発チームを結成。大型機械が使える骨組みの設計や耐震強度の確保などについて研究してきた。
県などによると、17年度末時点のソーラーシェアリングに伴う農地一時転用の許可件数は三好や徳島など8市町で101件に上る。栽培作物はミョウガやサトイモなど野菜が主で、稲作による許可は今回が初めて。
西野建設の西野賢太郎社長(69)は「収入が増えれば若者も農業に興味を持ち、長期的には農地を守ることにもつながる。データを分析し、もうかる農業の仕組みをつくりたい」と話している。