スマートフォンを手にした「ながらスマホ」は、自動車だけでなく、自転車の運転でも取り返しのつかない事態を招く。そのことを心に留めなければならない。

 スマホを片手に電動アシスト自転車を運転し、歩行者(当時77)に衝突して死亡させたとして重過失致死罪に問われた元大学生が、横浜地裁川崎支部で執行猶予付きの有罪判決を受けた。

 判決から1カ月たつ。ところが徳島県内では依然、ながらスマホで自転車を走らせている若者の姿をたびたび見掛ける。引き続き「警鐘」を鳴らす必要があろう。

 有罪となった事案は、元大学生が飲み物を持った右手でハンドルを握り、左手でスマホを操作しながら川崎市内の市道を運転。友人と無料通信アプリのLINE(ライン)でやりとりし、スマホをズボンのポケットにしまう際に前をよく見ず、歩行者に衝突、死亡させたというものだ。

 自転車は道路交通法で車両の一種と定められ、スマホを操作しながらの運転は禁止されている。飲酒運転などと扱いは同じで、違反すれば罰金が科せられることもある。

 なのに、いまだ危険性の認識が広く知れ渡っているとは言い難い。

 川崎支部の判決でも「自転車が人を死傷させ得るとの自覚を欠く運転で、周囲の安全を全く顧みない自己本位な態度」と、運転者の認識の欠如が厳しく指摘された。

 自転車は身近で手軽な乗り物として、幼少期から利用されることが多い。このため、自転車側が加害者となり、最悪の場合には相手を死に至らせてしまうという意識が希薄になっている―という指摘もある。

 大事なのは、教育だろう。携帯電話会社などが学校を訪ね、携帯電話やアプリの適切な使い方を児童・生徒に指導する取り組みは、以前から行われている。

 今後は、ながらスマホによる自転車の運転がいかに危険か、より手厚く指導するのが求められるのではないか。

 内閣府の2017年度調査によると、スマホは中学生の6割近く、小学生でも約3割が所有している。小学生の段階から啓発を図り、家庭でも親がしつけるべきだ。

 警察庁の集計では、スマホを含む携帯電話を使用中の自転車が、歩行者を死傷させた事故は昨年1年間で45件起きた。10年前の3倍超で、今後も増える可能性がある。

 川崎支部判決後に遺族が出した「自転車は一つ間違えば人を殺せてしまう乗り物。運転する側の安全への認識が強まること、事故に適用される法律が厳罰化されること、どちらも重要と考えている」との談話は重い。

 事故を抑止する上で、厳罰化は有効な手だてに違いない。だが、まずは啓発をさらに徹底し、一人一人がルールを守る意識を高めよう。

 ながらスマホの危険性を、社会全体で共有したい。