沖縄県読谷村の木版画家・名嘉睦稔(なかぼくねん)さん(62)の個展「風の伝言(いあい)」(徳島新聞社主催)が11月30日から、徳島市のあわぎんホールで開かれる。沖縄の風土に根差した代表作約80点に加え、徳島で取材した新作数点も出品する。名嘉さんは5日、作品づくりの構想を練るため来県し、鳴門市の渦潮や四国霊場1番札所・霊山寺などを訪れた。
鳴門海峡では水中観潮船「アクアエディ」に乗り込み、展望デッキから眺める豪快な渦と、水中で見る渦を堪能。霊山寺ではお堂を眺めたり、境内をゆっくり歩いたりしながら、寺に息付く信仰の歴史を感じ取った様子だった。
徳島の印象については「飛行機から、大小の川が血脈のように巡っているのを見て、水資源に恵まれた土地だと思った。水に関する絵を描けたら」と話した。8日まで滞在して徳島市や三好市を訪れ、作品のイメージを膨らませる。
名嘉さんは少年時代から感じていた自然への畏敬の念を基に、沖縄の海や森、生き物、人々の暮らしを大胆かつ繊細に表現する版画を制作。「地球温暖化防止京都会議」(1997年)の記念切手や「九州・沖縄サミット」(2000年)の広報絵はがきの原画を手掛け、作品は15年度の小学校図画工作の教科書に掲載されている。
名嘉さんは個展について「うれしさや優しさと同時に、悲しみやねたみといった負の感情も持ち合わせながら、しっかりと生きていくことの素晴らしさを伝えたい」と話している。
名嘉さんは8月の徳島市の阿波踊り期間中も来県し、県内各地を視察する。個展は11月30日から来年1月9日まで。