三好市市井川町と同市西祖谷山村をつなぐ古道「旧祖谷街道」を復活させようと、住民有志が整備を進めている。かつて多くの人や物が往来し、平家落人伝説も残る歴史ある道だが、近年は通る人がいなくなって荒れ放題となっていた。再び通れるようにして昔日をしのぶとともに、登山愛好者らに利用してもらい、活性化につなげたい考えだ。
2015年10月に井川町の住民ら6人が町おこしグループ「チーム・ノスタルジー」を結成し、活動を始めた。整備しているのは街道のうち、井川町井内東知行(380メートル)と井川町と西祖谷山村の境にある水ノ口峠(1120メートル)を結ぶ約4キロ。
旧祖谷街道は、吉野川南岸沿いを通る「伊予街道」から祖谷に至る最短ルートで、大正初期までは吉野川で荷揚げされた塩、米、干物や、祖谷で生産されたタバコ、炭、まきが行き来した。平安末期に屋島の合戦で敗れた平国盛が、幼い安徳天皇と共にこの道を通って祖谷山に入ったとの伝説も残る。
しかし、昭和中期以降は周辺に舗装路が整備されて次第に廃れ、雑木や草が生い茂ったり、石がふさいだりして通れない状態になっていた。地元でも忘れられつつあったことから、後世に伝えようと有志が集まった。
会員は冬場を除いて月2、3回、チェーンソーで草木を伐採するなどしている。現在は会員が13人に増え、約2キロの整備を終えた。早ければ今秋にも、全区間が通行可能になる見込みだ。
整備に当たっている同市井川町井内東の高垣勇さん(71)は「若い頃に峠へ上がった記憶がよみがえってきた。本当に懐かしい」と話す。同市井川町井内西の農業元木良一さん(61)は「県西部の登山スポットとして、多くの愛好家に訪れてほしい」と夢を語った。