患者1人にかかる金額は年間3500万円―。日本生まれのがん治療薬「オプジーボ」は、高所得者でもなければおよそ利用できない高額な薬価で話題となった。政府は薬価改定時期前の昨年、半額に引き下げる特例措置を講じる。治療効果が目覚ましく、使用を望む声が膨れ上がったためだ

 オプジーボの創薬を牽引した京都大の本庶佑特別教授が、ノーベル医学生理学賞に輝いた。販売開始から4年というスピード受賞が、功績の大きさを物語っていよう

 免疫力に働きかけるがん治療では、免疫細胞の攻撃力を強め、がん細胞を撃退する方法が一般的だ。本庶さんの視点は違った。免疫細胞の攻撃を抑えようとするがん細胞の力を取り除くことで、免疫力を強化させた。逆転の発想に感服する

 かつて、がん治療を新薬がどう変えたかを聞かれ、こう答えた。「がんが治るようになったということだ」。相当な自負である

 大阪大大学院で40代の本庶さんに師事した徳島市の医師、野間喜彦さんは「好奇心を大切にして挑戦し続けろ」との助言を繰り返し受けた。時々思い出すという

 本庶さんは76歳。受賞の記者会見では「治療法が発展するよう、もう少し研究を続ける」。好奇心はみじんも衰えていない。継続雇用年齢の70歳延長をもくろむ公の動きなど、歯牙にもかけない意欲である。