<人生はその日その夜を嘆きのうちに/すごすような人にはもったいない。>。そううたったのは、11世紀ペルシアの詩人オマル・ハイヤームである

 <恋する者と酒のみは地獄に行くと言う、/根も葉もない囈言にしかすぎぬ。/恋する者や酒のみが地獄に落ちたら、天国は人影もなくさびれよう!>。およそ、こんなふうなことをつづった人だ

 刹那に生きた享楽主義者。作品には、そんな印象を残すが、実は後世まで知られる大学者でもある。真理をどこまでも追い掛け、行き着いた果てが「どうも分からん」。じゃあ一瞬を限りなく大切に生きよう

 こちらも刹那主義者と言えようが、一瞬を大切にどころか、泥を塗り重ねての逃避行である。49日間、約360キロ。大阪府の富田林署から逃亡した樋田淳也容疑者が、山口県内で捕まった

 自転車に「日本一周中」と看板を掲げ、記念撮影にも応じた。「大阪府内潜伏説」に固執する警察をなめきっていたに違いない。投入された延べ約15万人の警官の目をかわし、紀伊水道か瀬戸内海か、少なくとも2度、海を渡った

 見立て違いで長引いた愛媛の脱獄事件から半年とたたない。教訓が生かせないとは府警もお粗末だ。警戒が緩いと見ての渡海だったか。みすみす通過させた四国の警察も、その日その夜を反省のうちにすごすべきだろう。