憲政史上最長の政権も視野に入る安倍晋三首相だが、そうしたことへの高揚感より危機感の方が強いのではないだろうか。

 先の自民党総裁選で連続3選を果たしたものの、地方票で石破茂元幹事長に善戦を許した。沖縄県知事選では与党の支援候補が大敗を喫した。

 党内には、「安倍1強」への陰りを指摘する声が出始めているほか、来夏の参院選へ不安も広がってきている。逆風での第4次安倍改造内閣の船出であり、前途多難と言わざるを得ない。

 首相には、政策推進に当たり丁寧な説明と、合意形成への努力が求められる。

 組閣について、首相は政権の安定や政策の継続性を重視したと説明する。しかし、政治の要諦は信頼である。麻生太郎副総理兼財務相の続投は、国民意識と懸け離れていよう。

 「森友学園」の文書改ざんや事務次官のセクハラ問題など、財務省の不祥事が相次いだ。にもかかわらず、麻生氏は説明責任を果たさず、管理責任も取らずじまいだ。

 これまでにも辞任を求める声があっただけに、留任に違和感を覚える人は少なくないだろう。

 もとより、最大の責任は任命者である首相にある。麻生氏が政権にとどまる限り、負のイメージがつきまとうことを覚悟すべきである。

 総裁選で石破氏に厳しく指摘されたが、首相自身の政治姿勢も改める必要がある。

 反省は口にするものの、言葉だけ。国民からそんな印象も持たれている。早く不信感を払拭しなければ、政策推進もおぼつかなくなる。

 初入閣は12人と、安倍内閣で最多となった。石破派からも抜てきし、挙党態勢を築いた形だ。「適材適所」を疑問視する向きもあり、国会運営で不安もあるが、それぞれが政策課題を認識し、国民の負託に応えてもらいたい。

 首相は、経済重視の方針を維持し、アベノミクスの総仕上げを急ぐ構えだ。デフレ脱却の道筋をどう付けるか、消費税率10%引き上げをスムーズに行えるか。少子高齢化や人口減少社会を踏まえた対策も急務である。

 首相は総裁選で、「全ての世代で安心できる社会保障制度に向けて3年かけて大改革を行いたい」と宣言した。

 共同通信社の世論調査でも取り組むべき課題として「年金・医療・介護」が最も多かった。痛みが伴う負担と給付のバランスをどう取るのか。難しいテーマだけに、早急に具体策を練ってほしい。

 自民党役員人事では、選挙対策と憲法改正に向けて、自身に近い議員を起用した。本腰を入れて取り組む考えのようだ。

 選挙対策はともかく、憲法改正にはもっと慎重さが要る。今月下旬にも予定される臨時国会に党改革案の提出を目指すようだが、容認できない。今は何よりも、喫緊の諸課題に力を尽くすべきだ。