容疑者を確保できたのは何よりだが、大事なのは不祥事の要因をしっかりと検証し、再発を防ぐことである。

 留置中の大阪府警富田林署から逃走を続けていた容疑者が、48日ぶりに山口県で捕まった。

 富田林署から約360キロ離れた周南市の道の駅で、食料品を万引したとして警備員に現行犯逮捕された。

 脱走直後に大阪府内で自転車を盗み、ひったくりや万引などの犯罪を重ねながら逃げていたとみられる。脱走がなければ起きなかった被害であり、原因をつくった府警の責任は極めて重い。

 容疑者は、自転車で日本一周をしているという無職の男=占有離脱物横領容疑で逮捕=と愛媛、香川両県境付近で知り合い、自身も日本一周に挑戦していると装って、男と行動を共にしていたようだ。

 脱走犯だと感づかれないように考えたのだろう。捜査当局は逃走経路などの解明を急いでもらいたい。

 今回の事件は、留置施設の管理態勢の不備を突かれ、やすやすと逃げられたという府警の大失態である。

 容疑者は8月12日、署内で弁護士と接見した後、面会人とを隔てるアクリル板を蹴破り、隙間から逃げたとみられている。

 部屋の扉が開くとブザーが鳴る仕組みだったが、署は電池を入れず、作動しないようにしていた。「接見終了は、弁護士が署員に知らせるので分かる」と理由を説明しているが、弁護士は署員に終了を告げなかった。

 凶悪犯を勾留することもある施設の対応とは思えない不手際に、あぜんとする。

 逃走発覚後の署の対処にも問題があった。

 署員が逃走に気付いたのは、接見が終わってから約1時間45分後。地域住民に警戒を呼び掛けたのは、さらに9時間もたってからだった。

 強制性交や強盗致傷などの凶悪事件を起こして逮捕、起訴されていた容疑者である。

 署は「不安を助長しないよう、事実確認を優先した」と説明するが、情報は即時に伝えるべきだった。

 住民の安心・安全をおろそかにした責任は大きい。

 一連の失態は、府警と富田林署だけの問題にとどまらない。全国各地の警察に対する見方が一段と厳しさを増している。

 情報の提供を巡っては、徳島県内でも疑問視される事案が発生した。

 徳島市で先月、容疑者が一時逃走した殺人未遂事件で、徳島名西署が情報の内容や発信エリアを一部に限定したため、小中学校の保護者らに混乱が広がった。富田林の事件後とあって批判が強まり、県警幹部が陳謝している。

 警察が地域からの信頼を損なえば、捜査などへの協力にも影響しかねない。

 全国の警察が危機感を共有すべきだ。管理態勢に不備がないか、徹底的に点検する必要があろう。