徳島県小児科医会 日浦恭一(徳島新聞朝刊 満1歳にて掲載)
マイコプラズマは細胞壁を持たない特殊な細菌です。一般の細菌に有効なペニシリン系やセフェム系の抗菌薬は細菌の細胞壁の合成阻害薬ですから細胞壁を持たないマイコプラズマに対しては効果がありません。
マイコプラズマ感染症に有効な抗菌薬としてはマクロライド系やテトラサイクリン系などの蛋白合成阻害薬やDNA合成阻害薬のキノロン系の薬剤に限られます。
ただしテトラサイクリン系の薬剤は乳幼児期に使用すると、永久歯に色素沈着を残すことが知られており、普通8歳以下の乳幼児には使用しません。従ってマイコプラズマ感染症を疑って抗菌剤の使用を考慮するときには第一にマクロライド系抗菌剤を使用します。
マクロライド系抗菌剤の代表であるクラリスロマイシンにはマイコプラズマに対して耐性を示すことがあります。現在でも最も使用頻度の高いのはクラリスロマイシンです。クラリスロマイシンの使用にも関わらず発熱の続く場合には8歳以上ではテトラサイクリン系の抗菌剤の使用を、8歳以下ではキノロン系の抗菌剤の使用を考慮します。
マイコプラズマ肺炎は一部の症例を除けば予後良好の疾患であり、耐性マイコプラズマであってもクラリスロマイシン使用によって回復することがあると言われます。これはマイコプラズマ肺炎が細菌の直接浸潤だけでなく宿主の免疫反応が関係して発生していることによると考えられます。
マイコプラズマ肺炎は時々小流行を起こします。咳が長く続く病気を見たときにはマイコプラズマ肺炎を疑ってみることも大切です。