「ああ、もうこれでいいわ」と思ったら終わり。
20年余りIT業界に身を置き、創業200年を超える家業の酒蔵に入った。最も違いを感じたのが、思ったことをストレートに発信できない、シャイな人が多いということ。IT業界は活発な人が多かったから。
考えて、言葉にして、行動してみると、できることは案外多い。それを一度でも体験すると、次のステップも同じように踏み出せるようになる。
社内で活発なやり取りを試みたこともあるが、無理やり変えようとしてもうまくいかなかった。環境をつくらなければ言い出せないこともあると分かり、社員が自らの考えを発しやすい雰囲気づくりを心掛けている。アワードも、新しいことを始めたい人が遠慮なく思いを表明できる場になればいい。
やると決断することは自分次第で、誰もが平等にできる。だからまずはやると決める。それからいろいろな人に「やりたいんです」と伝える。自分の考えに共感してくれる人がいれば自分の進む方向は間違っていないと分かるし、支えてくれる人も出てくる。
もちろん、やるからには走り続けないといけない。一つのプロジェクトが終わって、目指す世界に到達できなかったときに「あーあ」で片付けていないか。そこで変えていく勇気が要るんです。だめだったら、なぜだめだったのかを検証して進化させればいい。「ああ、もうこれでいいわ」と思うと本当に終わってしまう。
原動力はやはり喜び。苦しいことにも悲しいことにも喜びを感じられるか。「もうあかんわ、苦しいわ」と思っても「この困難は何を教えようとしてくれているのだろう」と考える。「こうすれば次の世界が広がるかも」と、そこに喜びを見つけられればまた頑張れる。
地方の時代はまだまだ始まったばかり。これからが面白いと思うのでぜひ、チャレンジの一歩を踏み出していただきたい。「できることはようけあるでえ」って感じです。
まつうら・もとこ 大学卒業後の1988年、ITベンチャーの草分けだったジャストシステム(徳島市)に入社。直販事業やインフォメーションセンターの立ち上げなどを経験する。情報セキュリティーシステム開発のトリニティーセキュリティーシステムズ(現ティエスエスリンク、徳島市)を経て2009年、家業の本家松浦酒造場(鳴門市)に入社。12年、同社の代表取締役に就任。52歳。徳島市在住。