徳島県阿波市市場町の町筋商店街で開かれてきた伝統行事「やねこじき」が6日、400年以上の歴史に幕を下ろす。住民手作りの人形を軒先に飾る秋の風物詩として、ピーク時には約3千人の見物客を呼び込む町の一大イベントに。だが、出展数の減少や運営に携わる住民の高齢化で存続が困難になった。主催するやねこじき保存会は「長年続いた行事をやめるのは寂しい。皆さんに最後を見届けてほしい」と来場を呼び掛けている。
やねこじきは江戸期に徳島藩祖・蜂須賀家政が旧市場村を訪れた際、住民が手作りした人形を飾って歓迎したのが始まり。保存会が出展者を募り、商店主らが世相を反映した人形を紙粘土などで作って店先に並べている。
運営に協力してきた市商工会によると、1983年には最も多い約30点の人形が商店街を彩ったという。しかし、景気低迷などの影響で個人商店が減少。近年は約10点に落ち込み、今年はわずか7点になっている。
92年からは開催時期を5月から10月に変更し、家政巡行の様子を再現した大名行列を催した。ただ、衣装のレンタル料などがかかることから2013年で終了した。
保存会のメンバーは1989年から関健七郎会長(73)=同市市場町町筋、自営業=だけになり、一人でPRや出展依頼をこなしてきた。「体力的な限界を感じている。これまでお世話になった方々には感謝している」と話している。
今年で12回目の参加となる阿波中学校美術部の三木千秋顧問(54)は「生徒が地域の伝統行事に関われる貴重な機会だった」と残念がる。市商工会は「イベントを再開したいという人が現れれば、前向きに検討したい」としている。
やねこじきは6日午前9時~午後3時。問い合わせは市商工会<電0883(36)5577>。