徳島県は、スダチやユズ、ユコウ、ミカンといったかんきつ類の栽培技術を教え、就農を支援する「人材育成塾」を本年度、勝浦町の旧果樹研究所に開設する。かんきつ類は神山、那賀、勝浦各町など中山間地域が主な産地で、担い手の高齢化や後継者不足などで栽培面積が大幅に減少している。新規就農を促して産地の維持、強化につなげる。
県内外からかんきつ類の栽培で就農を考えている人を募り、1年を通して木の枝切りや施肥、摘果、収穫などを、篤農家や県職員らから座学と実地で学んでもらう。加工や販売についても指導し、修了後には就農に向けて園地や住居の確保などを支援する。
近く関係市町村やJA、農地中間管理機構などでつくる協議会を設けてカリキュラムを検討し、来年3月ごろの開設を目指す。
スダチは神山町や佐那河内村、ユズは那賀町、ユコウは勝浦町と上勝町、ミカンは勝浦町が主な産地。県経営推進課によると、県内のスダチ、ユズ、ミカンの栽培面積は2015年度で計1623ヘクタールとなっており、05年度の計1911ヘクタールから約15%減少した。人口減少や高齢化のほか、広い園地が必要なこともあり、野菜などと比べても新規就農が進んでいないという。
旧果樹研究所は、13年度に開所した県立農林水産総合技術支援センター(石井町)に順次機能を移管し、本年度から常駐の職員がいなくなった。敷地面積約9ヘクタールで2階建ての本館(延べ1518平方メートル)と管理資材棟(同256平方メートル)をはじめ貯蔵庫、ハウス、スダチやミカンなどのほ場があり、産地振興に活用することにした。
塾以外にも、大学生がフィールドワークなどの際に利用できる宿泊施設や、地域食材の加工施設などでの利用も検討している。今月中に県内の若手農業者や大学生、商工業者らで作業部会を設け、若者の視点でにぎわいにつながる活用方法について意見をもらう。
県経営推進課は「スダチなどのかんきつ類の栽培は中山間地を支える重要な産業。産地の振興は地域の活性化にもつながる」としている。