徳島県阿波市市場町町筋の町筋商店街などで6日に始まった「やねこじき」は、今回で約400年の歴史に幕を閉じる。会場にはかつてのにぎわいを知る人たちも姿を見せ、住民らが誇りとしてきた名物行事の終焉(しゅうえん)を惜しんだ。
地元の市場、阿波両中学校や市場ボランティア協会をはじめ、市内外の7団体が紙、布、綿などで作った作品を出展。作者のさくらももこさんが8月に急逝した人気アニメ「ちびまる子ちゃん」や、米アニメ映画「ミニオンズ」のキャラクター、阿波踊りを楽しむ家族の人形など、世相や流行を反映した作品が並んだ。
阿波中美術部の「輝く君と振り返る平成」は、タレントのタモリさん、黒柳徹子さん、ビートたけしさんらを模した人形が登場。平成の世をにぎわせたヒット曲や流行歌、出来事を振り返るユニークな作品で、表情などの細かい作り込みが来場者の目を引いていた。
阿波中1年の新居由里奈さん(13)は「どの作品も素晴らしく、一生懸命作られているのが分かった」。約30年ぶりに見物に来た川内恵一さん(71)=小松島市坂野町、農業=は「伝統行事がなくなってしまうのは残念。これまで支えてきた人たちには、敬意を表したい」と惜しんだ。
人形の出来栄えについて審査員の審査と来場者の投票で、7日に市長賞などが決まる。
やねこじきは江戸時代初期に殿様が巡検に訪れた際、住民が手作りの人形を飾って迎えたのが始まり。住民が謙遜して「やねこいもの(粗末なもの)」と話したことに由来するとされる。
主催団体のやねこじき保存会では、唯一の会員である関健七郎会長(73)=阿波市市場町町筋=が30年来、運営などに尽力してきたが、後継者不足や出展数の減少で今年限りとなった。