相模原市の知的障害者施設で19人が刺殺された事件は、2日で発生から1週間になる。弱者やマイノリティーに不寛容になりつつあるとされる現代社会。知的障害がある人の親でつくる社会福祉法人「徳島県手をつなぐ育成会」の福永岩一理事長(78)は1日、「障害がある全ての人は宝物。全力で守りたい」と思いを語った。
「許し難いという思いを持ち続けている。障害のある子を持つ全ての親が同じ気持ちではないか」。福永さんは重度の知的障害がある長女(47)の親として、障害者の命が軽んじられる社会に警鐘を鳴らす。
事件後、育成会が運営する障害者支援施設の入所者たちは、ニュースを知って明らかに動揺していた。「あなたたちの命は守るから心配いらない」と言って落ち着かせたが、事件の影響の大きさを思い知らされたという。
元施設職員の容疑者が「障害者なんていなくなってしまえ」と供述していることには、「言葉がない」と口をつぐんだ。同時に、障害者への理解が浸透していない状況を嘆く。「今回ほどではなくても、障害者への偏見はなくなっていない。施設が山際に多いのはそういうことだろう」
親として反省すべき点もある。障害者福祉が充実する半面、育成会の活動に参加する若い親が少なくなっている。「子どもに障害があることを隠そうという風潮は依然根強い。親が団結して声を上げていかなければ、社会は変わらない」と語気を強めた。
政府が施設の安全確保を検討する方針を示しているが、「警備を強化して閉鎖的になれば、地域との交流が途絶えてしまう」と懸念する。地域住民との交流は障害者にとって何よりの楽しみ。「どうすればいいか、親の会としても積極的に関わっていきたい」
育成会は、互いに人格と個性を尊重する社会づくりを求める要請文を県や市町村に送った。「障害者のために何ができるのかが問われている。障害者と接点のない人と本当に共生する社会に変えるため、力を尽くしたい」と話した。