クレーンリース業の松村重機建設(徳島市入田町)が、東京電力福島第1原発(福島県)の廃炉作業を請け負っている。青森県の原発建設に関わった同社の松村芳紀社長(42)が「技術者としての贖罪(しょくざい)」のため、復興に力を注ぎたいと考えた。これまで原発建屋周辺の凍土作業に当たった。今後は排気筒の解体工事などを行う。
松村社長は都内の大学を卒業後、ゼネコン大手の鹿島建設に入社。8年ほど東通原発(青森県)の建設などを担当し、2005年に父が経営していた松村重機建設に入った。
松村社長によると、国内の原発の建物は強度が高く、安全性に問題はないとの指導を受けて建設したが、11年3月の東日本大震災で福島第1原発が爆発事故を起こし、考えが変わった。事故の映像を見て「原発建設に携わった者として『罪』を償いたい」との思いを強くした。
14年に鹿島建設時代の人脈を生かし、原発建屋周辺の地盤を凍らせる「凍土遮水壁」の設置工事を手掛けたほか、高濃度汚染水の除去などに取り組んだ。
現在は10人余りの社員と大型トレーラーを現地に派遣。1、2号機共用の排気筒の解体工事と、2号機の溶融核燃料(デブリ)を取り出すための関連工事の準備を進めている。
本年度中に工事を始める予定。社員は大型トレーラーを遠隔操作し、放射性物質に汚染された排気筒(高さ120メートル)の切断や搬出に当たる。
松村社長は月に3回現地に赴き、準備作業の進捗(しんちょく)状況を確認するなどしている。「非常に難しい工事だが、誰かが絶対にやらないといけない。廃炉まで福島から離れない」と力を込めた。