創薬ベンチャー「Delta−Fly Pharma」(デルタフライファーマ、徳島市)は12日、東京証券取引所の新興市場マザーズに上場した。同社は患者の身体的・経済的負担の少ない抗がん剤の実用化に取り組んでおり、新規株式発行によって資金を調達し開発を加速させる。

 同社の発行済み株式数は9月5日時点で360万5千株。上場時に新たに70万株を発行し、約33億円の調達を見込んでいる。これとは別に上場に合わせて、第三者割当増資で10万5千株を発行することも検討している。

 調達した資金は、米国で臨床試験を行っている再発・難治性の急性骨髄性白血病(AML)治療剤の開発に充てる。少量を長期に渡って投与することができ、既存の治療が難しい高齢者らにも使えると期待されている。

 薬物の有効成分をがん細胞に限定して送り込む「ドラッグデリバリーシステム(DDS)」を用いた抗がん剤の開発などにも資金を活用する。開発に向けた臨床試験を近く米国で申請する。

 同社は、大塚グループの大鵬薬品工業で取締役徳島研究センター長などを務めた江島清社長(69)=徳島市川内町=が2010年12月に設立した。開発から実用化までの期間を短縮するために、人での有効性が確立されている化合物に、用法や用量を変えるなどのアレンジを加える「モジュール創薬」を活用して、抗がん剤の研究開発を行っている。

 徳島市の本社のほか東京と中国・北京に研究開発などのための事務所を構えている。現時点で実用化した抗がん剤はなく、収入は提携した製薬会社からの契約一時金と開発の進展に応じた達成金が中心。18年3月期の売上高は1億5千万円、経常損失は2億4450万円、純損失は2億4626万円。社員は11人。