希代の芸術家、岡本太郎さんが終戦5年後に出した著書「アヴァンギャルド芸術」(美術出版社)にこんなくだりがある。<彼らの表現はノーマルな社会人の分別では到底考えられない、恐ろしいほどの激しさを持っている>
彼ら、とは知的障害者や幼児を指す。岡本さんは彼らの障害や未熟さに、自分と同じ「爆発」する力を感じ、喜んだようだ。賛辞を継いでいる。<我々を根源的な感動に回帰させる異常な魅力>と
徳島市の文化の森で障害者芸術祭「エナジー2018」が始まった。24回目の今年も油絵やクレヨン画、手工芸など315点が、これでもかと活力(エナジー)を放つ
けれん味が全くない。思いもよらぬ色使いあり、奇抜な構図あり。自由がほとばしり、根源的感動に触れる気がする
吉野川市の露口誠二さん(25)は、藍色の濃淡が美しい木工作品で、大賞(2人)に輝いた。「むちゃくちゃうれしい」。9年で入賞3度を経ての念願成就である。施設の通所作業にとどまらず、自宅に工房を設けて腕を磨いてきた
木工を指導する先生になるのが夢だ。「まだ修行中。けど大賞になって、夢に一歩近づけたかも」。制作は生きるエナジーでもある。<(障害者らの)純粋さは、芸術家にとって一つの理想像>。岡本さんが著書につづったこの一文も、励みになるだろう。