共同井戸の修復作業に取り組む徳島大建築サークル「AUT」のメンバー=徳島県牟岐町沖の出羽島

 徳島大理工学部の学生でつくる建築サークル「AUT(アウト)」が、牟岐町沖の出羽島にある共同井戸の修復に取り組んでいる。島の漁村集落は昨年2月、国の重要伝統的建造物群保存地区(重伝建)に選ばれた。学生は設計から建築までを手掛け、老朽化した井戸を重伝建の雰囲気に合うよう造り替える。今月下旬の完成を目指している。
 
 共同井戸は島の中央部にあり、島民が漁具の洗浄などで使っている。築50年以上が経過している上、昨年10月の台風21号による強風や倒木で、井戸を覆うスレート屋根が一部破損した。

 新しい井戸はコンクリートと玉石で囲う。スギとヒノキで井戸小屋(約8平方メートル、高さ約1・8メートル)を造り、屋根を瓦で覆って周辺の建物に合わせる。

 AUTの取り組みは県南部の伝統産業や文化を保存する「県南地域づくりキャンパス事業」の一環。理工学部社会基盤デザインコースの学生が所属し、約10人が井戸の修復に関わっている。

 学生は、理工学部の技術職員から設計図の書き方などを教わりながら、1月から計画を練り始めた。9月に計7日間、島を訪れ、古いスレート屋根を撤去したり、屋根の基礎工事をしたりした。10月21日に外壁を取り付けるなどして完成させる予定。建築費は40万円で、県と牟岐町が負担する。

 制作リーダーの3年平井怜(れん)さん(20)は「伝統のある土地で建物を造らせてもらうのは貴重な機会。島の魅力が伝わるような良いものを建てたい」と話している。