会社員時代はいかに面白い媒体をつくってもうけるかばかりを考えていた。独立して1社目の事業を売却したとき、3年間働くのをやめて子育てだけをした。子どもを幼稚園に送り迎えしながら「なぜ働くのか」をすごく考えた。答えはまだ出ていない。ただ2社目を売却し、3社目に当たる今の会社を創業するためベトナムで3年暮らした後に方向性が大きく変わった。

 それまでは会社を大きくすることが非常に大切だったが、帰国後は「その結果どうするか」を考えるようになった。社会的なインパクトとか、次の世代に何かを残すとか。自分が何かを残すだけではなく、残せるような人を増やしたいとも思った。だから、今の会社は大きくもうからなくてもいいような規模にしてある。たくさんの社員を食べさせたり、株主利益を追求したりしなければいけない環境では難しいテーマだから。

 今関心があるのは、社会課題をビジネスの手法で解決すること。それから、起業家が育つ環境をつくること。地域で育った起業家が、次の世代の起業家を精神的、物質的に支援することで地域内の起業家の層がだんだん厚くなっていく。そんなモデルを徳島でつくれたらいいと思い、このアワードのアドバイザーを引き受けた。

 地方には、ビジネスをやる隙間がたくさんある。大企業が生まれる隙間があるかどうかと聞かれたら分からないが、あるものを使って地道にやるスモールビジネスならたくさんある。その隙間を「自分が生きる場所はここにある」と信じて探すことが大切なんだと思う。

 自分自身が最近気を付けているのは「言語化できる前に動く」ということ。阿南市にサテライトオフィスを設ける時もそうだった。自然があって、人が良くて…というのが公式回答だけど、そんな場所は日本中にたくさんある。言語化できないけどやっぱり気になって、やり始めると何かが出てくる。

 「良い人材」というのも直感的で、あえて言葉にするとしたら、お金がショートしても、人がいなくなっても、ビジネスが本当にうまくいかなくなっても続けられる人がいい。優れたプランや学力よりも、持久力とリスクを取れる力を持った人に出会いたい。

 さとう・みちあき 電気通信大卒業後の1989年、リクルート入社。システム開発や経営企画に従事する。99年に独立して立ち上げたゴルフ予約サイトを急成長させ、2002年、楽天に売却。05年、東京、ベトナム・ハノイの2都市でハノイ・アドバンスド・ラボを創業。11年、ハノイで手掛けるオフショアシステム開発事業で、IT大手GMOインターネットと資本提携を果たす。15年、阿南市にサテライトオフィスを開設。50歳。神奈川県在住。