世界で最も長い期間、ウミガメの上陸調査が行われていることで知られ、アカウミガメの産卵地として徳島県の天然記念物に指定されている阿南市椿町の蒲生田海岸で、今年の産卵シーズン(5~8月)の上陸がゼロだったことが市の調査で分かった。住民らが1954年に調査を始めて以来、上陸が確認されなかったのは初めて。詳しい原因は分かっていない。

 蒲生田海岸では、例年は5月下旬から6月上旬にかけて初上陸が確認され、7月にピークを迎える。過去10年間では、年間3~52匹の平均24・8匹が上陸した。今年は、市地域おこし協力隊の助田光穂さん(24)が住民から監視員を引き継ぎ、5月から海岸を毎朝見回ったが、上陸は確認できなかった。

 このため、市は8月末で終わる予定だった海岸の監視を9月末まで延長した。ただ、同海岸で9月に上陸が確認されたのは、過去20年間では2015年の1匹しかない。

 一方、阿南市内の他の海岸では今季、上陸数が大幅に増えた。市文化振興課によると、畭町の淡島海岸では上陸23匹(産卵3回)、中林町の北の脇海岸では15匹(6匹)と、過去10年間で最多。いずれの海岸も昨季はゼロだった。

 これらの要因について、日本ウミガメ協議会(大阪府枚方市)の松沢慶将会長は「隣の和歌山県でも上陸数は増えており、なぜ特定の海岸で減ったのかは分からない。来年も低迷するようなら調査が必要だ」と言う。

 「蒲生田海岸に上がるはずだった個体が他の海岸に行った可能性はある」と指摘するのは、日和佐うみがめ博物館カレッタの田中宇輝学芸員。「正確には分からないが、海岸付近の明かりや砂の量が影響しているかもしれない」と話した。

 蒲生田海岸の漂着ごみを拾うなどの自然保護活動に取り組む「KITT賞賛推進会議」で昨年までウミガメ部会長を務めていた鎌田武さん(87)=同市桑野町西谷、農業=は「ウミガメの上陸を楽しみにしている住民は途方に暮れている。地道に清掃に取り組んでいくしかない」と声を落とした。