徳島ヴォルティスのホームゲームに欠かせない存在が、公式チアリーディングチームBLUE SPIRIT(ブルー・スピリット)。スタジアム前の広場やキックオフ前のピッチなどで笑顔で躍動し、雰囲気を盛り上げます。一体感のあるダンスや組み体操のような技などでファンの多い彼女たちを取材しました。
BLUE SPIRITは、徳島ヴォルティスの公式チアリーディングチームとしてJリーグ参入の2005年に結成。スタジアム前広場の特設ステージでショーを2回行い、キックオフ前にはスタジアムで踊ります。試合後は出口で観客を見送ります。
試合以外でも、アスティとくしまで行われたパブリックビューイング(5月20日、アウェー金沢戦)やファン感謝祭(7月1日)でショーを披露したほか、福祉施設でのイベントに出演するなど、さまざまな場所で観客を楽しませています。
当初は鳴門教育大のチアリーディングサークルと徳島市のダンススタジオのメンバーが中心でした。現在は中学生から社会人までの12人が所属していて、メンバーは随時募集中。ヴォルティスのファンでチアに興味を持った人、ダンス経験者で踊る場所を求めて入った人などさまざまで、受験などで一時的に活動を休み、復帰するメンバーもいます。
練習は週2回、平日の夜に3時間ほど徳島市立体育館などで行われています。この日、練習のために集まったメンバーは9人。入念にストレッチをした後、スタンツ(組み体操のようなパフォーマンス)を繰り返したり、音楽を掛けてダンスを練習したり。
仲間同士で腕の角度や立ち位置など、改善点を指摘し合いながら完成度を高めていきます。真剣そのものですが、合間には和気あいあいと話す場面も。よりレベルの高いパフォーマンスが見せられるように、月1回外部講師を招いて、バック転などのアクロバットの練習にも力を入れています。
なぜBLUE SPIRITに入ったのか、どんな気持ちでパフォーマンスをしているのかをメンバー3人に聞いてみました。
◎春名真美子さん(27) キャプテン
「年齢も経験もさまざまな人が集まっていますが、互いに言いたいことを言って仲が良いですよ」と話す春名キャプテンは、BLUE SPIRITの初期メンバーの1人です。
ダンスもサッカー観戦の経験もなかった春名さんがメンバーになったのは、2005年の6月頃、当時中学2年生でした。「チアチームができたばかりで、メンバーを一般公募していたんです。応募前に初めてスタジアムで見たとき、キラキラしてかっこいいなと思って友だちと一緒に参加することに決めました」
サッカーに興味があったわけではありませんでした。「やっているうちにハマりました。チアにもサッカーにも」。最初は月1回のチアのステージとサポートスタッフとして運営に携わる日々。観客に声を掛けてもらい、やりがいを感じました。同時に、スタジアムで試合を見る機会が増えて、勝つ楽しさと歓声や応援の一体感に魅了され、アウェーにも見にいくようになりました。
メンバーが減って、ステージに立つ人数が少なくなった時期も。「人数が減ると見せられるパフォーマンスも限られてしまう。私たちは求められているのかな、と不安になることもありましたが、チアで盛り上げてヴォルティスの試合に足を運んでもらえるようにと思って続けてきました」
創設から10年以上がたち、何度もメンバーは入れ替わってきました。経験や年齢の異なる個性豊かな顔ぶれを一つにまとめます。「初心者でも、1曲ずつできる曲を増やしていくように練習しています」。最近ではクラブに提案して踊る機会を増やしてもらい、試合前の広場で2ステージとキックオフ直前、息の合ったパフォーマンスを披露しています。
ステージの時間だけではなく、サポーターと触れ合う時間のすべてを大切にしています。チアをヴォルティス観戦の楽しみの一つにしてほしいと考え、スタジアムを訪れた人一人一人の顔を見て言葉を交わしています。
「シーズン後半は、観客も選手も一体になって、今まででいちばんいい雰囲気です。足を運んでくれる人に感謝して、来てくれた人がまた来たいと思ってもらえるように、スタジアムの雰囲気づくりを楽しくサポートできたらいいなと思っています」
◎玉田亮子さん(30)
しなやかなダンスとはじける笑顔が印象的な玉田さん。ストレッチでは180度に開脚!体の柔らかさに驚かされます。「実は10年間新体操をしていて、富岡西高時代にはインターハイ団体5位入賞したことがあります」。社会人になって地元徳島にUターンして数年、体を動かしたい、ダンスがしたいと思っていたときに勧められたのがBLUE SPIRITでした。初のJ1昇格を決めた2013年シーズンから活動し、6年目です。
練習では、新体操の経験を生かしてアドバイスすることも多い立場。「優雅な動きの新体操と違い、チアでは機敏さが求められる。最初の2年くらいは慣れなくて大変でした」
チアと仕事の両立はハードで、平日夜の練習は仕事が終わってすぐに駆けつけています。「職場が協力的で『頑張ってね』と送り出してくれるし、遅刻してもメンバーが受け入れてくれるので続けられます」
最近アクロバットの練習で側宙ができるようになったそう。「いくつになっても努力を続ければ成果が出るんだなと思います。練習場所や講師をクラブが用意してくれる環境への感謝の気持ちを、パフォーマンスでお客さんに返したい。チアをきっかけにヴォルティスを好きになったという声を聞き、励みになっています」
チアを始めたきっかけは踊りたいという気持ちでしたが、今ではすっかりヴォルティスに魅了されています。「試合を見るとワクワクするし、選手とサポーターの距離が近いと感じます」と話します。
BLUE SPIRITは観客と近く、雰囲気を盛り上げる温かさが持ち味。観客の見送りは、試合終了のホイッスルが鳴る前に、スタンドの歓声を聞きながら各出口にスタンバイします。シーズン前半、いいプレーをしながらも勝ちきれない試合が続いたときも、笑顔で「ありがとうございました」と一人一人に声を掛け、手を振り続けました。「ツイッターでサポーターの『苦しいときでもチアが笑顔で見送ってくれる』という書き込みを見つけて、気づいてくれている人もいるんだと感動しました」
現在、チームはJ1昇格プレーオフ進出を目指して負けられない試合が続きます。「スタジアムの雰囲気をつくる一員として、チアのメンバー、サポーターみんなで選手を後押ししたい」と話しています。
◎長崎琉花(るな)さん(13)
最年少の長崎さんは、今春、板野中学校入学と同時に加入しました。小学生の頃からヴォルティスの試合を見にいっていたそうで、BLUE SPIRITにあこがれていました。「今ステージに立つようになって、自分もそんな存在になれるかな、と思っています」
小学生の頃は地元のチアリーディングチームに所属。現在は、家族に送り迎えをしてもらって練習に通い、先輩のアドバイスに真剣な表情で聞き入ります。「先輩たちは優しくて楽しい。BLUE SPIRITに入って笑顔や大きな声が出せるようになって、できることが増えました」
スタジアムではサポーターから「デビューおめでとう」と声を掛けられたことも。スタジアム内でのパフォーマンスは「サポーターがひとつになっていて、踊りやすいです。選手たちもきっと力になっているだろうな」と、応援の力を実感しています。
10月7日の金沢戦では、試合前のステージでMCも経験しました。まだ慣れませんが、観客の温かい後押しでやりきりました。「MCが苦手なので、もっとうまくなりたいです。お客さんを楽しませるために、笑顔でパフォーマンスしたい」と成長を誓っています。
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メンバーは随時募集中。詳しくは徳島ヴォルティス公式サイトのチアリーダー募集ページ。