養殖ノリの「色落ち」被害を防ぐため、徳島県は今冬、色落ちの一因とされる海水中の栄養不足を補う実験を始める。下水処理場から放出する栄養塩(主に窒素やリン)濃度を調整し、海水中の濃度を高める。色落ち被害は近年、徳島をはじめ瀬戸内海沿岸で目立っており、漁業者から対策を求める声が上がっていた。
県水・環境課などによると、瀬戸内海では赤潮防止のため下水処理による水質改善を進めた結果、海水中の栄養塩濃度が低下。このためノリやワカメの成長に必要な栄養分が不足し、1990年代後半から色落ち被害が目立つようになった。
実験では、県の下水処理場・旧吉野川浄化センター(松茂町)から海に放流している排水の栄養塩濃度を高める。現在は1リットル当たり7~8ミリグラム含んでいる全窒素量を規制基準内の15ミリグラムまで増やし、改善効果や水質変化などの調査を進める。
5日、同センターで検討会が開かれ、県農林水産総合技術支援センターや徳島大の研究者ら約20人が出席。県の担当者が瀬戸内海の現状などを説明した後、具体的な実験の手順や期間(10月~来年4月)を確認した。漁業者に生育状況の聞き取り調査も行う。
県水・環境課は「効果的な下水処理の方法を見つけ、水質を守りつつ資源の豊かな海づくりにつなげたい」としている。
瀬戸内海では兵庫や香川、愛媛などでも同様の取り組みが行われている。