強気の政治家の、別の顔を見たことがある。2002年、仙谷由人元衆院議員が56歳の時だ

 この年の1月、仙谷さんは、がんで胃の全摘出手術を受け、4月に政界へ復帰したばかり。大病を経験した政治家として、何を思う。事務所でそんな話を聞かせてもらった

 悪いことばかりじゃない。過食が改まり、成人病の境界領域だった血液検査の数値が良くなった、と大声で笑った。仙谷節全開とはいかないまでも、冗舌だった。胃がない分、食事は1日5回少しずつ。こんなのでもいいんだよ、と小ぶりのようかんにかぶりついた

 再発を恐れても仕方がない、と威勢はいいが、強がりにも聞こえた。「そうそう、あの人はどうしてる」。宣告された余命を超え、前向きに生きる胃がん患者を紹介した、1年近く前の筆者の記事を覚えていたらしい

 ためらいつつ事実を伝えると、仙谷さんは硬直した。しばらく沈黙した後、命をいとおしむように、幾分声を落として語った。豊かさってのは経済成長率とは別の所にあるよね、世界はこのままでいいはずがない。民主党政権誕生、7年前のことである

 官房長官時代はけなされる方が多かった。それでも仙谷流を貫いたのは、自らの命と向き合った経験が、多少なりとも影響しているかもしれない。まだ何事かをなせた72歳。その若さを惜しむ