臓器の構造や大きさなどが人間に近く、疾患モデルをうまく再現できる動物として注目されるブタから、研究目的に合った「遺伝子改変ブタ」を簡単に作る新しい手法を、徳島大先端酵素学研究所の竹本龍也助教(発生生物学)らの研究グループが世界で初めて確立した。ブタの受精卵に電気刺激で一時的に穴を開けることで、遺伝子を改変させる「ゲノム編集」に必要な分子を容易に注入できるようにした。糖尿病やがんなどの病態を再現したブタを効率よく作製できるようになり、治療法の開発に寄与することが期待される。

 ゲノム編集では、遺伝子を切る役割のタンパク質と、どの部分を切るかをガイドするリボ核酸(RNA)を対象の核内に送り込むことが必要になる。竹本助教らは、両者を含む溶液にブタの受精卵を入れて30ボルトの電気を流すことで、受精卵の核に両者を導入する「受精卵エレクトロポレーション法」(GEEP法)を確立した。受精卵は全て、遺伝子改変されていることが確認できた。

 今回の実験では、GEEP法を用いたゲノム編集で、ブタの筋肉増殖を抑える遺伝子の働きを抑制しようと試みた。ゲノム編集した受精卵200個を雌ブタに胚移植したところ、生まれた子ブタ10匹全てが遺伝子改変されており、通常より筋肉の多いブタになった。

 これまでは、核を取り除いたブタの卵細胞に、遺伝子を改変したブタの体細胞の核を入れてクローン胚を作る「体細胞クローン法」が主流だった。しかし卵細胞から核を取り除いたり注入したりする工程は手作業で、高度な技術と多くの時間を要するのが難点だった。

 体細胞クローン法ではクローン胚100個を作製するのに5時間以上かかっていたが、GEEP法では15分程度でできるようになる。技術的にも容易で特別な機器も必要としないため、これまで専門機関に作製を依頼していた遺伝子改変ブタが、多くの研究機関で作れるようになるとみられる。

 糖尿病やがん、腎不全など人間の病気に似た症状を有する「疾患モデルブタ」を効率よく作製できるようになることで、治療法や創薬の研究など医学の進歩に大きく貢献する。成果は、14日付で米科学誌サイエンス・アドバンシズに掲載された。

 竹本助教は「医療分野はもちろん、畜産分野でもブタの価値は高い。病気に強いブタの開発なども含め、多くの分野に貢献できればうれしい」と話している。