油圧機器メーカーKYBによる免震・制振装置のデータ改ざん問題で、不正の可能性があり調査が必要な製品が、徳島市の県立中央病院とNHK徳島放送局を含む全国各地のさまざまな施設で使われていることが17日、明らかになった。四国電力の伊方原発(愛媛県伊方町)の事務所棟など原発の関連施設でも使われているほか、東京五輪・パラリンピックの競技会場に設置されていることが判明するなど影響が拡大。不正が疑われる装置の導入を公表するなどした自治体は徳島県など19都道府県と39市に上った。KYBは納入先の自治体などへの連絡を急ぐとともに、交換や補償を求められた場合の検討に入った。
県病院局によると、中央病院の免震装置はKYB子会社のカヤバシステムマシナリー製の揺れを抑える免震オイルダンパー(長さ3・2メートル)。2009年7月から12年6月に行われた改築工事で地下1階に7・5~9メートル間隔で20基が設置された。
16日の国土交通省の発表を受け、病院局が施工業者に確認したところ、不正の疑いがある製品を使っているとの報告があった。
NHK徳島放送局は、設置基数や設置時期などを明らかにしていない。国交省は、不正の疑いがある免震装置が使われた施設が県内に9件あると発表している。
四電の発表によると、伊方原発の事務所棟には4台のオイルダンパーが地下に設置されている。災害時などに拠点となる「緊急時対策所」とは別の施設で、四電は原子力災害の対応上は問題ないとしている。
国交省は不正な装置が使われた建物の強度を第三者機関が検証した結果、震度7程度の地震でも倒壊の恐れはないとしているが、欠陥建築に詳しいNPO法人建築Gメンの会の大川照夫理事長は「地震で予期せぬ揺れ方をした際に、トラブルが生じる可能性は否定できない」と指摘した。
KYBと子会社は基準の範囲内に収まるようデータを改ざんしていた。地震の際に設計通りの性能が発揮できず、建物への影響が想定より大きくなる恐れがある。
KYBは不正の疑いを含めて全国の986件の建物に装置を納入しており、不正な製品は全て取り換える方針を表明している。
KYBは建物の具体名を明らかにしていないが、自治体や企業が17日、調査が必要なダンパーの使用状況を明らかにした。浜岡原発(静岡県御前崎市)や敦賀原発(福井県敦賀市)で事故の際の非常用施設に使用され、五輪施設や自治体庁舎などで使われていた。東京スカイツリー(東京都墨田区)や通天閣(大阪市)などにも設置されている。
KYBは同日、データ改ざんの対象物件のうち、所有者の了解が得られた建物の具体名を19日午後に公表すると発表した。