台風16号の接近に伴い、徳島県内の5市町で記録的短時間大雨情報が出た20日朝、各地で浸水被害が相次いだ。猛烈な雨や川の増水でみるみるうちに道路を雨水が覆い、近くの住民らは不安そうな表情で雨がやむのを待った。中には逃げ遅れて救出される人もいた。
午前11時までの1時間に120ミリ降った徳島市に隣接する佐那河内村下の園瀬川は増水してあふれ、川沿いの国道438号が冠水した。約100メートルにわたって水に浸かり、近くの民家に迫った。
土のうを積んだ家の前で川の様子を心配そうに見ていた木下幸子さん(80)は「前は床上まで水が来たこともある。早く雨が収まってほしい」と心配そうに話した。
午前11時までの1時間に約110ミリが降った石井町では、石井、高川原両地区を流れる渡内川の水位が上がり、付近の用水路からあふれた水で道路が冠水。住民らは膝下まで水に浸かりながらも、車を冠水地点の駐車場から移動させたり、荷物を抱えて水の中を歩いて避難したりした。
職場付近が浸水した久米清美さん(69)=同町石井、鍼灸師=は「地面にたたきつけるような集中豪雨で、外に立ってはいられないほどだった」と怖そうに話した。
徳島市一宮町東丁では午後零時すぎ、道路が浸水して近くの小屋に避難していた男性1人を消防署員がロープを張って救助した。男性にけがはなかったという。
県南部でも猛烈な雨が降り、各地の道路が冠水した。阿南市橘町大浦の国道では近くの海が満潮になった影響もあり、約60センチ冠水。通行していた車がタイヤの上まで水に浸かって動けなくなった。午前10時半ごろから国土交通省徳島河川国道事務所が通行止めにした。
県道路整備課によると、正午現在、県管理の国道、県道は21路線35カ所で通行止めとなっている。