油圧機器メーカーのKYBは19日、免震・制振装置の検査データ改ざん問題で、不正や不正疑いがある免震装置が使われている国や自治体の庁舎70件の建物名を公表した。24都道府県にわたる。国交省は徳島県内にも9件あると発表しているが、今回のKYB側の公表には含まれなかった。住居や病院は了承が得られておらず、今回の公表は全体の6%にとどまった。このうち11件で国が定めた揺れを抑える性能基準に適合しない製品を設置し、顧客が要求した基準から外れた物件も17件あったが、大半で不正の有無は「不明」だった。対象は全国で1095件に拡大した。

 KYBによると、同意取り付けには時間がかかるため、公共性の高い国や自治体庁舎の公表を優先したという。制振装置を使っている物件は公表を見送った。同意が得られた段階で他の物件も順次、公表する。

 KYBの斎藤圭介取締役専務執行役員は19日、東京都内で開いた記者会見で「不適切行為を起こし、誠に申し訳ない」と謝罪した。中島康輔社長は問題対応の優先を理由に出席しなかった。

 対象はこれまで説明していた987件とは別に108件あることを明らかにした。改ざん前の数値が基準内に収まっていたとして公表していなかったという。

 不正は2003年3月以降、少なくとも8人の検査員が関わっていたとされる。子会社首脳は不正が行われた理由について「(検査員が)生産計画の日程を守るためにデータを改ざんした」と指摘した。

 KYBの外部調査委員会は、長期間にわたって不正が続いた原因などを年内をめどに報告する。
国基準不適合の製品を設置していたのは、農林水産省が入る中央合同庁舎第1号館や愛知県本庁舎、神戸地方合同庁舎など。顧客の要求基準外は名古屋市本庁舎や長野県庁本館などがあった。

 KYBと子会社は、地震の揺れを抑えるオイルダンパーと呼ばれる装置の性能検査で、国や顧客の基準に適合しなかった製品のデータを基準内に収まるよう書き換えていた。不正の疑いがある製品は原則全て交換に応じる方針だが、最短でも20年9月までかかることが分かっている。

 東京スカイツリーの運営会社は19日、使用している装置にデータ改ざんがあったと発表した。安全性に問題はないとしている。

 徳島県立中央病院 契約基準外13本

 油圧機器メーカーのKYBと子会社による免震・制震装置データ改ざん問題で、改ざんの疑いがある徳島県立中央病院(徳島市)の免震オイルダンパー20本のうち、13本が契約基準から外れた製品だったことが19日、分かった。県は製造したKYB子会社のカヤバシステムマシナリーに対し、早急に交換するよう要請した。

 免震ダンパーは、揺れを抑える性能が基準値のプラスマイナス15%以内に収まるよう建築基準法で定められている。カヤバ社は顧客との契約で基準値のプラスマイナス10%以内とする、より厳しい規定を定めており、県立中央病院の13本はこの基準を満たしていなかった。

 県病院局に同日、カヤバ社の担当者から「計算上、安全性に問題はないが、交換が必要」と連絡があった。残りの7本は性能が確認できておらず、同社が確認を進めている。病院局はカヤバ社に対し、早急な確認と詳細な説明を求めた。