大塚グループの大鵬薬品工業で取締役徳島研究センター長を務め、8年前、61歳のときに創薬ベンチャー「Delta|Fly Pharma(デルタフライファーマ)」を徳島市に起業した。「体力と仕事がある限り、まだまだ挑戦はできる」。熱い思いが株式上場を実現した。
患者の身体的・経済的負担が少ない抗がん剤の実用化に取り組む。新薬は各国で承認を得るため、開発段階に応じて効能や安全性に関し専門家の厳しいチェックを受ける。「これまでの抗がん剤開発の流れや、既存の薬との比較などを頭にたたき込んでいないと、客観的に説得できない。経験が物を言う」と「シニア起業」の利点を訴える。
城南高卒。名古屋工業大、東京工業大大学院を経て大鵬薬品工業に入り、医薬品開発に取り組んだ。各国で行う抗がん剤の臨床試験などの責任者も務めた。そんな現場で医師や患者から繰り返し聞いたのが治療薬の痛みなど副作用に悩む声。「患者に優しい薬を作ろう」。それが今の新薬開発の原点になった。
欧米のバイオベンチャーも身近に見てきた。自分でやり切れるベンチャーの魅力を知り、退職後、「もうひと仕事したい」と奮起。起業後は、1年半ほどしてベンチャーキャピタルの支援を受けるまで無収入で打ち込んだ。がんの免疫治療薬開発に道を開いた本庶佑京都大特別教授のノーベル医学生理学賞受賞も「刺激になった」。持ち前の挑戦心は今も膨らみ続ける。
趣味は釣り。徳島市の自宅で妻京子さん(64)、長女夫婦、孫4人との8人で暮らす。69歳。