宮入りしようとするみこしと、祭りを続けようとする屋台が境内でせめぎ合う。鳴門市瀬戸町明神(あけのかみ)にある大元神社は、担ぎ手たちの威勢のいい掛け声と、見物客の歓声に包まれていた。毎年10月17日に行われる秋祭りの最大の見せ場だ。
午前9時、石段を登った高台にある本殿からみこしが出発し、同時に明神地区六つの町が所有する6台の屋台が繰り出した。
日が暮れると、静かだった境内に人が増え始める。町中を練り歩いていた、みこしと屋台が帰ってくる時間だ。遠くから太鼓の音が聞こえだし、見物客がざわつく。次第に音は大きくなり、境内に集結する。
みこしを6台の屋台が囲み、激しくぶつかる。鈍い音が響き、担ぎ手が吹き飛ばされることもしばしばだ。迫力のすごさに見物客も圧倒される。
大元神社総代長の沢口修司さん(69)=同町明神=は「いつから始まったかは分からないが、地区の伝統行事として受け継がれている」と話す。町ごとにそろえた法被に身を包んだ住民たち。その背中には、地域への愛着と祭りへの誇りがにじんでいた。