徳島の盲導犬を育てる会が新たに作った視覚障害者への配慮を呼び掛けるポスター。声を掛けることが事故を防ぐと訴えている

 視覚障害者の山橋衛二さん=当時(50)=が警報音を鳴らさずにバックしてきたトラックにひかれて死亡し、一緒にいた盲導犬「ヴァルデス」も死んだ事故から10月3日で1年になる。事故を受け、徳島県や関連団体が視覚障害者を取り巻く環境改善に取り組み、事故防止への機運が高まりつつある。

 徳島市で盲導犬と18年暮らしている鶴野克子さん(51)は「街中でバックブザーや音響信号機など『音』が増えたと思う。音だけが頼りという訴えが、少しずつ社会に理解され始めたと感じる」と話す。一方で「盲導犬が一緒なら万全ということでもない。道路などで危ないと思ったら、一声掛けてくれるだけで助かる」とも話し、周囲の配慮が不可欠だと訴えている。

 山橋さんの事故を受け、県は国土交通省と警察庁に対して警報音の作動や装置設置の義務化を求める政策提言を行い、県身体障害者連合会も国交省に同様の申し入れをした。県トラック協会は会員事業所に装置の緊急点検を求め、徳島の盲導犬を育てる会はパネル展やポスター製作を通じて視覚障害者への理解と配慮を訴えてきた。

 県内ではこの事故の後、視覚障害者が絡む死亡事故は起こっていないが、8月には都内の地下鉄ホームで盲導犬を連れた視覚障害者の男性が転落死した。周囲が声を掛けていれば助かった可能性が指摘されている。

 徳島の盲導犬を育てる会はこれまで、小学校で開く啓発活動などで、盲導犬にはむやみに触れたり声を掛けたりしないように呼び掛けてきた。鶴野さんは「仕事中の盲導犬には声を掛けないでほしいが、飼い主に一声掛けて承諾を得たら、犬に触れたり名前を呼んだりするのは問題ない」と話す。

 徳島市内で盲導犬と暮らす別の女性(69)も「災害など緊急時は一声掛けて状況を伝えてくれるだけでも安心できる」と話し、周囲の見守りの必要性を強調する。

 育てる会の杉井ひとみ事務局長は「盲導犬と一緒でも、目が見えない障害者に変わりはない。周囲が視覚障害者や交通弱者に関心を持ち、声を掛けてもらうしか事故は防げないという思いに至っている」と話している。