特定不妊治療(体外受精と顕微鏡授精)を対象にした公的助成制度の利用件数が徳島県内で急増している。県によると、2015年度は849件と、前年度に比べ125件(17%)増え、04年度の制度創設以来最多となった。不妊治療が一般的になり、制度が拡充されてきたことが利用を促している。一方、16年度からは年齢制限が設けられるなど制度が後退した側面もあり、不妊に悩む夫婦からは不満の声も聞こえる。
助成制度の利用件数は≪グラフ≫の通り。制度創設以降、右肩上がりで、15年度は04年度の約8倍となっている。県健康増進課は「不妊治療への理解が広がり、制度の周知度も上がってきた」とみている。
制度開始当初、年間の助成額は年度当たり上限10万円で、支給期間は2年までだったが、06年度以降、助成額は増え、支給期間も延長されてきた。県も13年度から受精卵の凍結保存への助成に3万円を上乗せし、15年1月からは男性不妊の治療に補助するなど独自の助成を行っている。
16年度からは、それまで「初年度3回、2年目以降2回」としていた年間利用回数の制限を撤廃し、通算利用回数内なら1年間に何度でも利用できるようになった。
一方、制度の利用対象は妻の年齢が43歳未満の夫婦に限定され、通算利用回数は初回申請時に妻が40歳以上の場合は3回まで、40歳未満の場合は6回までとなり、従来の10回より減った。
厚生労働省は「妊娠・出産に伴うリスクが少なく、治療により出産に至る確率が高い年齢の人が制度を多く利用できるようにしている」と説明する。
県内で妊娠適齢期の啓発活動を行う団体「はぐくむたまご」の佐藤泰子代表(41)は、制度変更について「年間の回数制限が撤廃されたことで、短期間に集中して治療を行う人は助かる」と評価する一方、「1人目を不妊治療で授かり、2人目を考えようという夫婦にとっては、通算利用回数が少ない」と指摘する。
40歳で特定不妊治療に踏み切り、既に3回利用した徳島市内の女性(43)は「妊娠の確率などから年齢制限が設けられるのは仕方ないにしても、通算利用回数が減ったのは残念だ」と話している。