読んだことをすぐに忘れるものだから、また同じくだりを読む。<且つ忘れ且つ読む灯火亦親し>相生垣瓜人

 同じ内容の本を何冊も買ってしまう人もいる。忘れているのではなく<今読まないと、この気分は消えるという場合にも、所持している本を買う>という理由で

 そんな「本の虫」と呼ばれる5人が著したのが「本の虫の本」(創元社)。「つんどく」「カバーおかけしますか」「猫を抱いて本屋になる」・・・と本にまつわるうんちく154項目をつづっている。前段は、その一つで「同じ本を何冊も買う」という話だ

 説教くさくなく、その道の達人が道案内するごとく、さりげなく書かれている。<扉、窓、そして本/どれも手で開く>で始まる詩もある。友達がいない、できないという人に、本は急がせないし、脅かさないと説き、<本が友だちでよかったと思える日が必ずくる/外の世界なんか少しも怖くない/読書はつまり生きることと同じ行為なんだ>と

 読んでは忘れ、忘れては読む日々だけど、同じ中身の本でも、年齢や気分によって読後感は違ってくる

 本書では、本文の最終項目の余白に、「本の虫」のこんな言葉を採っている。<すべての人々ののっぴきならない生き様の果てに成立する一冊。それを書物という>。もうすぐ読書週間。友になる一冊との出合いを。