点滴を運ぶカートを施錠する職員=徳島市民病院

点滴を運ぶカートを施錠する職員=徳島市民病院

 横浜市の病院で発生した点滴連続中毒死事件を受け、徳島県内の医療機関が院内の安全対策に頭を悩ませている。病院関係者による犯行との見方が強まる中、点滴の保管場所に監視カメラの設置を検討する動きはあるが、抜本的な対策を見いだすのは容易ではなく、「内部の犯行は防ぎようがない」と困惑の声が上がる。

 徳島市万代町4の田岡病院は、病棟内のスタッフの行動を確認するため、ナースステーションや点滴の保管場所の近くに監視カメラを設置する考えだ。

 これまで外部からの侵入者による犯行を想定し、病院の玄関に設けたカメラで人の出入りをチェックしてきた。看護部の阿部純子総師長は「患者の安全が最優先だが、職員を疑うような対策で不本意だ」と苦渋の表情を浮かべる。

 同市北常三島の徳島市民病院では事件後、薬剤部の関係者が点滴の管理法について協議したが、内部犯行を防ぐ新たな対策は浮かんでこなかった。

 点滴は地下1階の専用室で管理しており、入退室する際はIDカードが必要となる。入院患者用の点滴は施錠したカートを使って専用エレベーターで運ぶ念の入れようで、部外者が点滴に触れるのは難しい。伏谷秀治薬剤部長は「今以上の対策は思いつかない」と話す。

 県立中央、三好両病院は、看護師が24時間待機しているナースステーション内で点滴を管理し、海部病院は施錠できる部屋に保管している。

 横浜市の事件の詳細は明らかになっておらず、厚生労働省から県医療政策課に指示や通知はない。同課は「どう対応していいか分からない」としている。