決壊すると下流の住宅や公共施設に被害が出る恐れのある「防災重点ため池」のうち、耐震性が不足しているものが徳島県内に52カ所あることが県の調査で分かった。ため池は東日本大震災による決壊で被害をもたらし、耐震化が求められているが、費用面がネックとなっている。県は本年度中に今後の整備方針などを定め、対策を急ぐ。
県によると、県内の農業用ため池は20市町村に550カ所ある。東日本大震災を受け、県は農業用ため池のうち受益面積が2ヘクタール以上で、決壊した場合の被害が7ヘクタール以上か4千万円以上の145カ所の耐震診断を2013年度から進め、今年3月末時点で111カ所の診断を終えた。その結果、89カ所が震度5強以上の揺れに対する耐震性が不足していた。
この中で防災重点ため池は52カ所。市町村別では阿波市が17カ所で最も多く、徳島市9カ所、美馬、三好両市が各5カ所と続く。県は来年度中にも残り34カ所の診断を終えることにしており、耐震不足のため池はさらに増える可能性もある。
県内のため池は水利組合や土地改良区が管理していることが多い。耐震工事の事業費は平均1億円前後で、国と県の補助を除いた地元市町村と管理者の負担分は20~25%。農家が高齢化する中、費用面が課題となっている。
各市町村は、決壊した場合の浸水範囲や浸水深を記したハザードマップの作成を進めていて、3月末時点で9市町の57カ所分が完成している。
県は本年度、点検結果を踏まえて「ため池防災加速化計画」を策定し、今後の整備方針や水位を下げるなどの安全確保策を定める。さらに、管理者に補助制度を紹介するなどして整備を促進する。
県農業基盤課は「ハード面とともに、市町村にハザードマップの作成を呼び掛けてソフト面にも力を入れ、防災対策を進めたい」としている。