年間約80万人が参拝する23番札所・薬王寺。トイレ建物と便座数は徳島県内の札所で最も多い=美波町

四国八十八カ所霊場のトイレといえば、しゃがむ「和式」のイメージが強くないだろうか。県内の23カ寺を見渡すと、ここ最近は洋式トイレが増え、温水洗浄便座まで現れている。足腰が弱い高齢者や和式の使い方を知らない外国人への配慮からだ。長い修行の第一歩を踏み出す「発心の道場」とされる県内の霊場の新しい光景が垣間見える。
 

 現在、23カ寺のトイレは駐車場または境内のいずれか、または両方に設けられている。全て洋式化しているのは3カ寺で、5カ寺は和式のみ。15カ寺は和式と洋式が交じる。

 全て洋式の3カ寺は、7番十楽寺(阿波市)と16番観音寺(徳島市)、19番立江寺(小松島市)。十楽寺は男女全てが温水洗浄便座だ。3カ寺とも過去10年以内に「時代の要請」と判断して改修した。

 改修に対する寺の考え方はさまざまで、洋式化を進める寺がある一方、「多額の費用が必要で改修は簡単ではない」「自治体が公衆トイレを建ててはどうか」「紙詰まりや故障の修理費がかさむ」との声もある。

 和式しかない5カ寺のうち、標高約800メートルに建つ12番焼山寺(神山町)は「湧き水を利用しているため、渇水時期があり、冬には凍る日もある。安定的な水の確保が難しく洋式に踏み切れない」と話し、「洋式を望む参拝者には麓の公衆トイレを紹介している」という。

 また、15番国分寺(徳島市)は約40年前、駐車場にトイレを建てたが、当時は和式で十分と考えていたそうで、近い将来、便座の一つを洋式に改める計画だ。

 洋式と和式が交じる15カ寺をみると、4番大日寺(板野町)と20番鶴林寺(勝浦町)は、ほとんどが洋式化されている。大日寺は、和式の古くて汚いイメージを拭い去ろうと、約10年前に改修したという。

 21番太龍寺(阿南市)は、駐車場のトイレは和式だが、1992年にできたロープウエー山頂駅の横に洋式がある。水道がないため大量の水をゴンドラで運ぶ。「山寺の洋式化に感激し、お接待でトイレットペーパーを提供、掃除をしてくれる人もいる」

 23カ寺の中でトイレの建物(4カ所)と便座数が最も多い23番薬王寺では、参拝者が年間約80万人に上るなど、利用者の年齢や国籍は幅広い。

 トイレの改善は巡礼者を案内する先達の望みでもある。先達約350人でつくる「88トイレの会」の灘健二会長(65)=奈良県=は参拝のたび、寺に「和式は洋式に。洋式は温水洗浄便座に」と要請している。

 また、23カ寺中8カ寺に男女兼用トイレがあり、カナダ出身の遍路研究者で徳島大准教授のモートン常慈さんは「欧米では考えられない。洋式化と同時に、こうした面も配慮が必要だ」と改善を望んでいる。

 四国八十八カ所霊場会会長で74番甲山寺(こうやまじ)(香川県善通寺市)の大林教善住職は「トイレの在り方は各寺の考えや事情を尊重するほかない」とした上で、「一般家庭でも洋式が普通になっている。改修計画がある寺は検討してほしい」と話している。