徳島のいいところをビジネスの観点からいうと、一番は「課題の多さ」でしょうね。それは徳島故の課題というよりも日本が抱える慢性的、構造的な課題なんだけれども、過疎化が進む地域だからこそ可視化されやすい。ビジネスはお客さまの課題を解決してこそ成り立つわけだから、それがたくさんあるということは起業家にとって素晴らしい環境でしょう。

 もちろん、商圏が小さいという側面は否定できない。でも、徳島で立ち上げた事業を徳島だけで展開する必要はない。行政がよいサービスをつくっても、隣町の事業を受注するというのは考えにくい。それは民間だからできることであり、営利組織が社会で果たすべき役割、機能だと思う。一だと厳しいものを百にして成立させるという考え方ができなければ、東京でも通用しません。

 起業はすごく難しいことのように見えるし、大変といえば大変だけど、原理原則はとてもシンプル。課題がある、期待に応える、お金がもらえる、それだけ。でも多くの人が「何をしたらもうかるか」から入ってしまう。都会だと最初から大きなお金の話をせざるを得ないところがあって、「5億円以上のビジネスをするための素材を探しましょう」となる。マーケットが抱える課題や真の声がそこにはなく、もうからないからやめてしまう。

 僕の経験則でいうと、とにかく続けること。サイファー社の製品も創業後の3年は誰も買ってくれなかった。ただ7年、8年たつと、同じ営業をしてもお客さまが「7年、8年続いてるってことは本物だね」と言ってくれるようになった。

 米国には新しいものを他社に先んじて買うという発想がある。保守的な日本はベンチャー向けのマーケットではないという人もいるが、日本人は「日々続けること」の大変さを分かっていて、それを続けた者に対する敬意という共通の感覚がある。スピード、スピードと言われる今の時代、3年もやれば続けたことが価値になる。だから、これから何かを始める人にはとにかく続けてほしい。

 よしだ・もとはる 美波町(旧日和佐町)出身、在住。神戸市外国語大卒業後、ジャストシステム(徳島市)などを経て2003年、東京でITセキュリティー開発のサイファー・テックを創業した。12年、美波町にサテライトオフィスを開設。13年には同町に本社移転を果たし、仕事と暮らしの両立を目指す「半IT半X(Xは個人の趣味)」を提唱する。オフィス移転によって浮き彫りになった地方の課題をビジネスの力で解決しようと同年、地域活性化支援などを手掛ける「あわえ」(美波町)を設立し、代表取締役。44歳。