本殿に設置される麻製のしめ縄=神山町神領の上一宮大粟神社

本殿に設置される麻製のしめ縄=神山町神領の上一宮大粟神社

 全て麻で作られたしめ縄が、神山町神領の上一宮大粟(かみいちのみやおおあわ)神社に奉納された。麻は邪気払いとして神事に使われてきたが、高価なため、最近のしめ縄は化学繊維や木綿に取って代わられており、徳島県神社庁によると、非常に珍しい。奉納したのは、麻文化の継承を目指す「日本麻振興会」(栃木県鹿沼市)で、天皇に麻織物を献上するなど麻と縁の深い徳島を第1弾の奉納先に選んだ。

 しめ縄は3本で、最大の縄は太さ15センチ、長さ5・5メートル、残る2本は、同6センチ、同4・5メートルと、同5・4センチ、同4メートル。黄金の光沢があり、本殿に設置された。鈴を鳴らす「鈴緒(すずお)」(同7センチ、同2・8メートル)も贈られた。

 原料の麻は、国内最大の麻産地・栃木県鹿沼市の農家で振興会理事長の大森由久(よしひさ)さん(68)が作った。栽培面積3ヘクタールのうち、毎年50アールほどでしか収穫できない最高品質の麻で、伊勢神宮のしめ縄や大相撲の横綱白鵬のまわしに使われているものと同じという。

 京都市の清水寺や八坂神社に麻製品を納めてきた株式会社山川(同市)が編み込み、縄にした。大森さんや山川によると、同等の品質のしめ縄は国内にほとんどない。

 繊維や神事として麻が使われる機会が減っていることを心配した日本麻振興会理事の安間(あんま)信裕さん(38)=愛知県一宮市、建設業=がPRの意味も込め、しめ縄奉納を企画。麻と縁の深い徳島で奉納先を探していたところ、神社関係者から由緒ある上一宮大粟神社を紹介され、昨年11月から準備を進めた。

 振興会の会員ら約300人が参加して神社で開かれた奉納式には、天皇即位の大嘗祭(だいじょうさい)に使われる麻織物の麁服(あらたえ)を代々献上してきた三木家(美馬市木屋平)の当主三木信夫さん(80)も出席し「希薄になった日本の文化を住民が思い出すきっかけになれば素晴らしい」と奉納を祝った。

 同神社総代会副会長の尾田稔さん(71)は「最高の宝をいただいた。30、40年と守りたい」と話し、安間さんは「これをスタートに、全国の神社に活動の輪を広げたい」と話した。