今年は例年に比べて風疹が沢山発生しています。風疹が流行すると免疫のない人から妊婦に伝染して先天性風疹症候群が発生する頻度が増加します。今月は風疹および先天性風疹症候群について考えてみました。

 風疹は発熱と発疹、後頚部のリンパ節腫大を特徴とするウィルス疾患です。風疹の多くは軽症に経過しますが、妊娠20週までの女性が風疹に罹ると子どもの眼、心臓、聴力、神経系に異常を来し先天性風疹症候群と呼ばれる異常を呈することがあります。妊娠週数が早いほど異常を来しやすいと言われます。

 母体に侵入したウィルスは血液から胎盤に侵入し、胎児循環に侵入して、胎児の細胞障害および細胞分裂の障害を起こします。その結果、児は先天性風疹症候群になります。妊娠早期には胎児の免疫機能が未熟であり妊娠の早期ほど障害が強くなります。

 妊婦が明らかな風疹に罹った場合、妊娠4~6週で100%、7~12週で80%、13~14週で45~50%、17~20週で6%が先天性風疹症候群になるとされます。20週を過ぎると発生はほとんどなくなります。

 白内障、先天性心疾患、両側性感音性難聴の3つが先天性風疹症候群の典型的な症状とされます。そのほか色素性網膜症、小眼球症、先天性緑内障などの眼症状、紫斑、脾腫、小頭症、精神発達遅滞、髄膜脳炎などが見られることがあります。

 妊婦の風疹の感染源で問題になるのは家族です。特に外の仕事で風疹に罹って帰ってきた男性が家庭内で妊婦にうつすことがあります。男性の風疹の免疫有無が問題なのです。