サウジアラビア人記者カショギ氏の死亡事件を巡り、米国の識者は嘆く。「道徳観念の欠如に商業優先主義が合わさるのは、中国外交の特徴だったが、米国も同じになってしまった」。米外交の変質を端的に言い表せば、そういうことになるのだろう

 事件はトルコにあるサウジ総領事館で起きた。在外公館で自国の反政府記者を殺害するという乱暴な手口だ。「改革派」ムハンマド皇太子の関与も取り沙汰されている

 サウジ政府は「口論と殴り合いの末に記者は死亡した」との調査結果を公表した。いいや違う、と反論したのがトルコのエルドアン大統領である。「計画的かつ残忍に殺害された」と断定した

 もっとも人権ということなら、野党やメディアを弾圧してきたエルドアン氏も例外ではない。事件を利用しようとの意図もうかがえるが、それを間引いても、真相に近いのはトルコ側のようである

 サウジに肩入れしてきたトランプ米大統領も、ここに来てようやく「史上最悪のもみ消しだ」と非難に転じた。心中を行き来するのは、総額約12兆円に上る武器輸出契約か、自らの不動産ビジネスか

 カショギ氏は”絶筆“で「表現の自由」を訴えた。かつての米国なら、金もうけよりも人権と、うわべだけでも取り繕ったのだろうが。トランプ氏、説得力のある行動がとれるかどうか。