神山町議会の全議員10人と後藤正和町長が25、26両日、国への陳情で東京を訪れる際に、有名庭園巡りや浅草観光を計画していたことが20日分かった。一部議員の指摘を受け、庭園巡りを取りやめて防災施設を視察するスケジュールに変更したが、浅草は「訪日外国人旅行者の視察」との目的で訪れる。町からは総額約40万円の出張旅費が支給される見込みで、町民や有識者から疑問の声が上がっている。

 陳情は25日に予定しており、全議員と後藤町長、議会事務局長が、財務省や国土交通省、県選出国会議員の事務所に出向いて、国道193号倉羅トンネル(上分)の早期着工などを求める。

 陳情を終えた一行は、翌26日午前10時前から国指定の名勝の旧古河庭園や鳩山一郎元首相の邸宅・音羽御殿を訪問。正午すぎから浅草で昼食を取り、浅草寺を見て回った後、帰途に就く予定だった。

 こうした計画を町議会全員協議会に諮ったところ、町議の1人が「視察という名の観光ではないか」と指摘。旧古河庭園と音羽御殿の訪問を取りやめ、東京消防庁立川防災館を視察することにした。浅草寺の訪問は変更しなかった。

 町議と町長には1人当たり、少なくとも計約3万4千円の交通費と宿泊費、日当が町から支給される。

 樫本雄一議長は「せっかく東京に行って時間もある。いろいろと見ておけば議員それぞれ勉強になると思った」と釈明している。

 町内の50代男性は「政治家の公金の使い道が社会問題になっている時に論外だ。そもそも議員全員で行く必要があるのか」と疑問を呈した。

 日本大の岩井奉信教授(政治学)は「公費で行く以上、業務外の行動があってはならないのが大原則。監視の目の弱くなりがちな町村単位では、しばしば観光がセットになった陳情や研修が見られるが、公費の使い方に厳しい目が向けられており、許されない時代に入っている。議会への信頼が失われる結果になることを認識しておくべきだ」と述べた。