農業は今、さまざまな課題に挑んでいる。ブランド化や農地の集約、担い手確保、輸出拡大、温暖化への適応、鳥獣害対策、先端技術を活用したスマート農業など多岐にわたる。

 これ以外に、全国各地で取り組まれているのが6次産業化である。徳島県内でも国による掛け声の下、県や24市町村全てで、地方創生の目標を明記した戦略が策定され、多くの市町村が6次産業化を柱の一つに据えている。

 手厚い公的支援を受け、ジュースやジャム、ドレッシング、菓子など、各地で6次化商品が産声を上げている。そして市町村は、総合戦略の点検過程で「目標を超える商品数を達成した」と報告し、順調ぶりをアピールしている。

 果たして、本当に「順調」と言い切れるのだろうか。

 間違えてはいけないのが、6次産業化は、開発がゴールではないという点だ。開発された商品が生産者の所得を向上させて初めて成功と言っていい。雇用創出など地域への経済効果があれば、さらに評価は高まる。

 行政は、6次産業化の点検指標を「開発数」から、販売額など「経済的な実績」へと転換すべきだ。

 6次産業とは、生産者が生産(1次産業)だけにとどまらず、加工(2次産業)や流通販売(3次産業)も行うことを指す。

 地方創生のみならず、環太平洋連携協定(TPP)や日米通商交渉など、貿易自由化の波が押し寄せる中、強い農業を目指す方策としてクローズアップされてきた。しかし県内を見渡しても成功モデルがそうあるわけではない。

 生産者は農作物を作るプロではあるが、加工や販売のプロではない。レシピ開発、原料調達、パッケージのデザイン、価格設定、販売先開拓など、すべきことが待ち構えている。作ったものの、売れないのでは意味がない。

 経験者からは「安易にやらない方がいい」「黒字化には時間がかかる」とシビアな声も聞かれる。6次産業化は当然、大小の投資を伴う。中には公的資金を受けて開発される商品もある。生産者には相応の覚悟がいるし、支援する側にも販路開拓を軸に多様なサポートが求められる。

 農林水産省の6次産業化調査の中に、気になるデータがある。農産物直売所の年間販売高(2016年度)は、全国も徳島県も前年度に比べ4%増と、共に市場規模を拡大しているが、加工品の年間販売額は、全国が前年度比2%増なのに対し、徳島県は26%減だった。県は市町村やJAと連携し、生産者の所得向上につながっているのか、実態把握に努めるべきだ。

 6次産業化で食の魅力の発信力が高まれば、徳島県に足を運ぶ観光客の増加にも貢献するだろう。

 6次産業化は楽ではない。むしろ困難な道だ。生産者や官民が知恵を絞り、価値のある商品化を目指してほしい。