「現代の名工」に選ばれている人形師の「人形洋」こと甘利洋一郎さん(73)=徳島市勝占町原=が、大阪府能勢町の浄瑠璃PRキャラクター2体の浄瑠璃人形の製作を手掛けた。「3次元化」された人形はイベントでダンスを披露するなどして、PRに一役買っている。

写真を拡大 甘利さんが製作を手掛けたお浄(左)とるりりん(淨るりシアター提供)

 キャラクターは太夫の「お浄(じょう)」こと西能(にしの)浄(きよ)と、三味線の「るりりん」こと木勢(きせ)るり。いずれも3人遣いの人形で、大きさは約1・2メートル。甘利さんが頭と両手を手掛け、体は人形遣いの桐竹勘十郎さんが作った。

甘利洋一郎さん

 昨年9月から作り始めたが、通常の浄瑠璃人形と比べて目や鼻、口の大きさなどが異なるため、製作は難航。大人用のかつらを改良したり、顎を出して立体感を出したりする工夫を凝らし、今年5月に完成させた。

 人形を使わず、太夫の語りと三味線による「素浄瑠璃」が200年にわたって受け継がれている能勢町では、1998年から人形とおはやしを使い始めた。

 2体のキャラクターは2014年に誕生。同町の淨るりシアターでの人形浄瑠璃公演に映像で出演したり、傾城阿波の鳴門を素浄瑠璃で演じたりと、町公認キャラクターとして活躍している。

 若者世代に受けがいいことから、シアターは実際の人形を製作することにし、以前からつながりのある甘利さんに依頼した。

 人形は今年6月下旬にシアターでお披露目され、浄瑠璃にまつわる音頭に合わせてダンスを踊った。松田正弘館長(52)は「想像以上の出来栄えで、ファンに喜ばれている。2体が出演する演目を作ることも検討したい」と話す。

 キャラクターの人形を作ったのは初めてという甘利さんは「未知の世界で苦労した。2体の人形をきっかけに、若い人にも人形浄瑠璃に興味を持ってもらえたら」と期待を寄せている。